続パスカルの葦笛のブログ

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装飾音符を演奏したリーニフ指揮プラハ・フィルハーモニアのモーツアルト38番

オクサーナ・リーニフ(1978-)が楽譜にない装飾音符を演奏したことで古楽器派のモーツアルト指揮者であることが判明した。かつ大変な名演であった。


第一楽章。
121-123小節のホルンはf明記ながら、アンスネスとリーニフはこのfをそれ以上に強調していたところで、並みの指揮者でない頭角を現した。


240小節のテインパニのトロモロで、アンスネス指揮スウエーデン放送響とリーニフはsfで強調したのが注目された。


第二楽章。
早くも頭角を現したリーニフは、40ー41小節のオーボエで楽譜にない装飾音符で演奏させた。これは余人に代えがたい独創であった。

オーボエの4分音符を装飾音符でリーニフは演奏させた。38番の演奏で余人に代えがたい快挙となった。異才知るべし。


さらに、127-128小節のフルートで、古楽器派の巨頭ヘルベッヘとリーニフが装飾音符で演奏させていた。

ヘルベツヘ指揮フランクフルト放送響(2021・12・3)は2つの4分音符を装飾音符で演奏したのであるが、これは先行演奏のヘルベッヘをリーニフが学んだことは容易に想像がつくのであるが、トリオ楽章で装飾音符で演奏するというテーゼをトリオ楽章のない38番ではアンダンテ楽章で遂行するというヘルベッヘの凄さを学んだリーニフの謙虚さでもある。


モーツアルト交響曲38番「プラハ」の演奏で、1,2番を争う名演がかくして誕生したわけである。



さて、余談だが、最近のニュースで来年6月に山田和樹がベルリン・フィルのデビューをすることになった。曲目はサンサーンスの交響曲3番。ここで成功すると、超一流指揮者の中に躍り出ることになる。小沢征爾以上の最も成功した指揮者になるのだろう。だがサンサーンスの3番は難曲である。余人には代えがたい名演を生み出すのは正直難しい。人に「あっ」と言わせる手練れを持っている自信があるからチョイスした名曲なのだろう。ご成功をお祈りします、といいたい。彼は日本で唯一モーツアルトを装飾音符付きで演奏出来る指揮者なのだからである。


さらに余談。日曜日の日テレの名物番組『笑点』のコマーシャルをやっているのが、落語家のたい平さんと指揮者山田和樹だ。提供は龍角散で、先代藤井社長と現社長といいクラシック音楽の日本有数のパトロンであるのが知られる。と同時に山田和樹を起用しているので、二代にわたって音楽の分かる社長さんなのだ。脱帽。ちなみに龍角散本社の近所で輸入レコード店を趣味で経営し、海外のレコード事情にも精通していた。ピアノを弾いたりストラディバリウスのバイオリンを所有したり多面的な人だった。