続パスカルの葦笛のブログ

FMラジオやテレビやCDのクラシック音楽の放送批評に特化したブログです。

驚異の90歳現役指揮者三石精一

指揮者の三石精一(1932-)は今年90歳で、なんと2022年1月30日に東京芸術劇場で指揮をしていた。
プログラムは、チャイコフスキー幻想序曲『ロメオとジュリエット』、グラズノフバレエ音楽『四季』Op67より秋、ショスタコーヴィチ交響曲5番。三石精一指揮東京大学音楽部管弦楽団。


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さて、三石精一といえばNHKテレビの『夢のセレナード』(1965・1~)で、室内楽団を指揮してセミクラシックを演奏したのがデビューだと言われている。山本リンダ(1951-)が『装苑』のモデルオーディションに合格して人気モデルになったのが、この番組で三石精一が演奏している間モデル嬢をしていたことによる。1966年に『こまっちゃうナ』のレコードデビューして大ヒットする前のことだった。


番組は、俳優芥川比呂志が洒落た文章を朗読し、前後してセミクラシックの名曲が演奏されるといったもの。映画監督伊丹万作のエッセイで、本の厚さと机の広さとが相関関係が云々といった短文が紹介される。実に高級で洒落た音楽番組であった。


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三石精一は東京音大を定年退職して、20年相当の年になり現役を退いた感じで、活躍を聞かなかったが、『過去の三石精一指揮による演奏会』によると現役時代に劣らず活躍していることを知り、慶賀に耐えない。


三石精一といえばベートーベンの『エロイカ』の演奏が一番印象深い。
奇しくも、同じ日本の指揮者で高齢の外山雄三もそうだったのだが、『エロイカ』第四楽章348小節からpoco Anndannteになり、三石精一と外山雄三がフィルハーモニア版の楽譜に変更して著しいテンポの遅い演奏になる。こういったことはピリオド奏法になってからは完全に忘れられてしまった。


長年の指揮者としての研鑽の蘊蓄による働きが生きる場所になっている。こういう御大の演奏もやがて忘れられてしまうのかと思うと残念でならない。さて三石精一が堂々たる現役と知って、余計なことだと知った次第だ。指揮者としての熟練の腕は今なお発揮されていて、かけがいのない蘊蓄が死蔵されているわけではなかったわけだ。ますますのご活躍を期待したい。