続パスカルの葦笛のブログ

FMラジオやテレビやCDのクラシック音楽の放送批評に特化したブログです。

ロンドン交響楽団とロンドン・フィルの違い

オーケストラに呼び名・呼称を付けると、シンフォニーとフィルハーモニーの2種類に分類できる。その違いは成立時に音楽家が自主的に寄り合って作った団体が協同組合(フィルハーモニー)だからだという。まさしくウィーン王立歌劇場の楽団員が日々の公務の合間に自主的に集まって演奏した団体の呼び名がウィーン・フィルハーモニーだった。


ウィーン国立歌劇場管弦楽団で演奏する楽団員は公務員で、その公務員がアルバイトで働く団体がウィーン・フィルであった。公私の関係が今では逆転して、アルバイトの人が上位で公務員の演奏家が下位になってしまった。自主団体ウィーン・フィルは公務員の国立歌劇場管弦楽団の楽団員の中から選ばれるのであるが、選ばれない人が出てくる。多くは新人の音楽家である。


そこで曖昧が好きなウィーン子であるウィーン・フィルの面々は、レコード録音の仕事で、ウィーン・フィルのブランドを維持する仕事とそうでないウィーン・フィルのブランドからすると格落ちの仕事で、演奏団体をウィーン・フィルの呼称の使用とウィーン国立歌劇場管弦楽団の呼称の使用の2種類に分類する。


ここで理解に苦しむのが、公務員が私益のレコード録音をするわけがないのだが、そうであれば国庫に納められるわけだが、「金が欲しくて嫌々金のために演奏します」というクレジットを付けたのがウィーン国立歌劇場管弦楽団の呼称であった。


シエルヘンのベートーベン交響曲全集の録音はお金の為に嫌々録音したということになる。(クラリネットの名手ウーラッハやボスコフスキーなど出演していず、入団仕立ての新人さんばかりの構成、とか。)ワルベルクが1961年にウィーン国立歌劇場管弦楽団に呼ばれて指揮したワーグナーの『名歌手』はCDになる時ウィーン・フィルの名称に変えられた。税金で演奏されたものだが、自主運営で公演されたことになった。名演ですという箔を付けてくれた。
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さて、ロンドン交響楽団(LSO)とロンドン・フィル(LPO)である。さしたる根拠はないのだが、指揮者はLSO系とLPO系に明瞭に分類される。しかもLPO系の指揮者はどうも格落ちしてしまう運命にあるというのだ。誰が区分けしているわけではないのに、自然に区分けされて、そんな運命がまっているから、恐ろしい。


1932年、ビーチャムは長年BBC交響楽団の常任指揮者就任を希望していたがならず、私財を投じて相当するオーケストラを創立したのがロンドン・フィルだった。ビーチャムの縁でフルトベングラーはロンドン・フィルも指揮したが、どちらかというとロンドン響が好みだったか。


LSO系指揮者(ヨッフム、モントゥー、ニキッシュ、メンゲルベルク、ベーム、コリン・ディビス、ケルテス、バーンスタイン、アバド、ゲルギェフ、ラトル)


LPO系指揮者(サージェント、ボールト、プリッチャード、ブッシュ、ハイティンク、ショルティ、テンシュテット、ウェルザー=メスト、マズア、ネゼ=セガン、ユロフスキ、大野和士)


ユロフスキや大野和士がLPO系指揮者なのが将来を危惧するわけだ。ショルティやテンシュテットまで大成すれば十分という意見もあるが、テンシュテットがLSO系の指揮者だったらもっと大成したのではないかとも思う次第である。オーケストラは指揮者を選んでいるし、指揮者はオーケストラで大成もし、しないこともある。ドイツ正統派の指揮者テンシュテットがまるでドイツで評判が悪い。