続パスカルの葦笛のブログ

FMラジオやテレビやCDのクラシック音楽の放送批評に特化したブログです。

2023年12月のブログ記事

  • 江戸時代のイーロン・マスク中江藤樹(1608-1648)

    江戸時代に陽明学を中国から輸入した儒学者中江藤樹(1608-1648)です。 (起) 実は中江藤樹は潜伏キリシタンだったという説がある。日本の肖像画の元祖は聖徳太子で手に王のシンボルの尺を持っている。武田信玄は軍配を持ち覇王とする。千利休は道を究める者として扇子を持たせている。合掌の組手をした肖像... 続きをみる

  • マーラー・プリングスハイム・山田一雄・下野竜也第九の系譜學

    第一楽章300小節のテインパニの後半で山田と下野はリタルランドした。 山田一雄のこの演奏に接した時、私の動物的直感はマーラーが第九を演奏した時の痕跡ではないかというものだった。1943年からたった30年前肉体のマーラーがおこなった第九演奏を弟子のプリングスハイムは覚えていた。 下野竜也は2023・... 続きをみる

  • 「疾走するモーツアルト」デュメイ指揮関西フィルの40番

    まさか小林秀雄の「モーツアルト」がフランス人に影響したとは思わないが、遂に「モーツアルト」の評論のテーマらしい演奏が現れた。それがデュメイ指揮関西フィルの40番の演奏だった。 とりわけ40番の第一楽章の疾走するト短調の主題は小林秀雄の思いをデュメイが解して演奏したとしか思えない「疾走する悲しみ」を... 続きをみる

  • アゴギークの極地デュメイ指揮関西フィルのモーツアルト40番

    デュメイの40番は、年間名演ベストテンのベストワンに輝いた。とりわけ第四楽章は名演だった。 今回のデュメイの40番の演奏のコンセプトは緩急の対立にあった。急速な演奏のためにその後の緩和が目立って名演に感じられた。関西の落語の名人に緊張の緩和が笑いを誘うという理論があったが、名演の壺もそんなところに... 続きをみる

  • バーメルト指揮札幌交響楽団のシューベルト8番第四楽章

    シューベルト交響曲8番第四楽章旧版1078-1081小節のテインパニです。新全集版では弦楽のfz4つに合わせてテインパニで2分音符が4つ打たれている。この譜面を見る限り、そうかも知れないと思わせる。ここが新全集版の校訂者の売りの物件になっている。 誰かが自筆譜を見て、シューベルトはテインパニは空白... 続きをみる

  • バーメルト指揮札幌交響楽団のシューベルト8番第二楽章2

    メインカルチャーが揺らいでいる時、注目されるのがサブカルチャーの存在である。バーメルトはサブカルチャーに注目した演奏をこの第二楽章で演奏している。 80小節の続き、83小節のクラリネット、85小節のオーボエと歌い継がれる旋律に、84小節のチエロで突如として別の旋律が聞こえる。これがサブカルチャーだ... 続きをみる

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  • バーメルト指揮札幌交響楽団のシューベルト8番第2楽章

    第2楽章は名演だった。対位法の演奏法を駆使して、通常は沈んだ声部を浮上させて驚くべき魅力的な演奏をして見せた。 際立った2つの対立した旋律を同時に聞くことは煩わしいはずだが、名指揮者の資格はどれを主旋律に決定し、無慈悲な副旋律として決めて沈んでもらうことだ。基本的には指揮者の仕事は交通整理をする警... 続きをみる

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  • バーメルト指揮札幌交響楽団のシューベルト8番

    日本ではアバドが録音した新全集版の8番の演奏は評判が悪く、旧版が通常演奏される。 今回は新全集版に基ずいた第一楽章201-202小節のホルンの延長が演奏された。引用は205小節以降で、2か所で新全集版の変更が見える。 205,209小節のホルンが2小節延長されているのが新全集版なのだが、今回バーメ... 続きをみる

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  • ルイージ指揮NHK交響楽団のハイドン交響曲100番『軍隊』

    なかなかユニークな解釈があった。基本的にはアルノンクールの演奏が投影されていた。 第一楽章の62-67小節の金管の強調はアルノンクール指揮南西ドイツ放送響の演奏を踏襲したものだった。 アルノンクールの場合にはsf(スフォルツアンド)だったがルイージではfか。 こういう例は104小節の低弦で楽譜はp... 続きをみる

  • 不可逆的ダメージの先駆者ワルター・カルロスと『スイッチト・オン・バッハ』

    富田勲に影響を与えたシンセサイザーによるバッハ演奏は、ワルター・カルロスが1968年に発表した『スイッチト・オン・バッハ』。彼は男から女に性転換して、その後に女が好きになってしまった。 『タイムズ』が今年一番の本と推奨した『不可逆的ダメージ』が、今出版元KADOKAWAで不可逆的な出版になっている... 続きをみる

  • 晩年が始まる飯守泰次郎指揮東京シティー・フィルの『運命』

    この人の晩年ほど魅力的な演奏を聞かせた人はなかった。長い長い沈滞期があって、突如活火山が噴火したのである。爆発は地方の田舎者で、洗練された常識人にできている東京っ子は似合わない。しかも超セレブリティの出自だから、本来はありえないのだ。 NHKFMの功績は、飯守泰次郎の前半期と後半期の区分けに成功し... 続きをみる

  • 人生という作品を見事に生き抜いた尾崎翠

    女流作家の尾崎翠ほど自分の人生を見事に生き抜いた人は稀である。成功と栄光を勝ち抜いた人生を得た人は、勝ち組といわれるが、そんな人だった白洲正子は86歳の高齢で、「早く死にたい」と漏らしていた。勝ち組の末路はそんなものだろう。10年前は86歳は天寿だが、現在は96歳になって、高度医療の成果が出ている... 続きをみる

  • 反田恭平指揮ジャパン・ナショナル・オーケストラのブラームス1番

    高校生の坂本龍一は、門下生の発表会でブラームス1番第一楽章をピアノで弾いたという。大学に入ったらこういう音楽を作曲したいと抱負を語ったという。 ピアニスト反田恭平は、指揮者の最初にこの曲を選んだ。「この演奏会でしか聞けない演奏をしたい」と抱負を語った。なるほどこの演奏会でしか聞けない演奏はあった。... 続きをみる

  • 『小津安二郎は生きている』Eテレ平山周吉出演

    平山周吉の小津安二郎論が注目されて、要点を自ら出演して解説していた。 (1)山中貞雄の『丹下左膳余話百万両の壺』の壺は小津安二郎の映画にも扱われていて、        二人の友情が壺で表象されている。 (2)小津安二郎の『東京物語』では、原節子と笠智衆とが戦没者としての山中貞雄が追悼     され... 続きをみる

  • 近衛秀麿と大町陽一郎、仕込みには金が掛かる話

    近衛版ベートーベン交響曲は実はメンゲルベルク版ベートーベン交響曲であったことが判明した。メンゲルベルクのベートーベン交響曲全曲演奏会(1940)の演奏を反映していた。 この実演が日本でレコードで発売されたのは1973年であった。 出版社の音楽全集の刊行で、日本の指揮者と楽団が動員されて名曲の数々が... 続きをみる