続パスカルの葦笛のブログ

FMラジオやテレビやCDのクラシック音楽の放送批評に特化したブログです。

2022年11月のブログ記事

  • 天才コルビェーン・ホルテ指揮ノルウェー放送管弦楽団の『未完成』

    シューベルトの歌曲『魔王』レ-ガー編曲版を使用するところから、この人は尋常ではない人物である。案の定シューベルトの交響曲7番『未完成』の演奏は尋常ではなかった。 コルビェーン・ホルテ(1973-)はノルウェーのバイオリニストで指揮者である。1974年にオスロー音楽院の教授になった女流バイオリニスト... 続きをみる

  • 『世界サブカルチャー史』欲望の系譜9と『グラン・トリノ』(クリント・イーストウッド)

    今週のテレビはこの2つが妙に繋がっていた。 『世界サブカルチャー史』は、1980年代ちょうどアメリカに日本車が氾濫して自動車産業が没落した時で、日本車がハンマーで破壊された。日本人が憎まれて間違えられた中国人が殺される事件まで発生した。アメリカ人は本気で日本人を恨んでいたわけだ。今年中国人に間違え... 続きをみる

  • シューマンと岡潔「無明の音楽」ヘルベッヘ指揮フランクフルト放送交響楽団の4番

    昔岡潔という数学者がいたが、彼はシューマンの音楽は「無明の音楽」だと言った。曖昧模糊として不鮮明な旋律から救いようのない一種狂人の音楽のように喩えられていたが、それこそがシューマンの本質で救済され難い人間の業のようなものを表現していたに過ぎなかった。つまり人間の無明を表わしたのだ。 またフランス人... 続きをみる

  • グレン・グールドと『草枕』(8)草枕本文

    *春は眠くなる。猫は鼠を捕る事を忘れ、人間は借金のある事を忘れる。時には自分の魂の居所さえ忘れて正体なくなる。ただの菜の花を遠く望んだときに眼が醒める。雲雀の鳴くのは口で鳴くのではない、魂全体が鳴くのだ。魂の活動が声が声にあらわれたもののうちで、あれほど元気のあるものはない。ああ愉快だ。こう思って... 続きをみる

  • グレン・グールドと『草枕』(7)草枕本文

    *余の考えがここまで漂流して来た時に、余の右足は突然坐りのわるい角石の端を踏み損くなった。平衡を保つために、すわやと前に飛び出した左足が、仕損じの埋め合わせをすると共に、余の腰は具合よく方三尺ほどな岩の上に卸りた。肩にかけた絵の具箱が腋の下から躍り出しただけで、幸いと何に事もなかった。(岩波文庫9... 続きをみる

  • グレン・グールドと『草枕』(6)草枕本文

    *こまかにいえば 写さないでもよい。ただまのあたりに見れば、そこに詩も生き、歌も湧く。着想を紙に落とさぬともキュウソウの音は胸裏に起こる。丹青は画架に向かって塗抹せんでも五彩の絢爛は自から心眼に映る。ただおのが住む世を、かく観じ得て、霊台方寸のカメラにギョウ季混濁の俗界を清くうららかに収め得れば足... 続きをみる

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  • グレン・グールドと『草枕』(5)グレン・グールドの本文朗読

    Oこれから第一章の抜粋を朗読します。(グレン・グールド) *山路を登りながらこう考えた。智に働けば角が立つ。情を通せば窮屈だ。とかくにこの世は住みにくい。住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生まれ,画が出来る。(岩波文庫7頁) 古来より『草枕』の... 続きをみる

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  • グレン・グールドと『草枕』(4)漱石とトーマス・マン

    *山路を登りながら、こう考えた。智に働ければ角が立つ。情に掉させば流れる。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。(岩波文庫7頁) O『三角の世界』は1906年に書かれた。しかしほとんど動きのないこの作品は、二年前の日露戦争下(1904年)が舞台になっている。この戦争は直接的な関係はなく、... 続きをみる

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  • グレン・グールドと『草枕』(3)戦後3人の新人グールド・ウォーホル・ディラン

    トランプによって分断ということが言われるようになったが、地方と都市の分断は古今東西あったわけで、漱石の『三四郎』やトマス・ウルフの小説はそれを扱っている。地方から首都に上京する若者は余りの文化格差に驚き、この街で頭角を現せるのだろうかと悩む。( 意外に人間の味覚は全国統一されず地方の特色が生かされ... 続きをみる

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  • グレン・グールドと『草枕』(2)グールドとバーンスタインの対決

    1962年4月6日のニューヨーク・フィル定期演奏会で、グレン・グールドとバーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルでブラームスのピアノ協奏曲1番が演奏された。演奏開始前に前代未聞のバーンスタインのスピーチがおこなられて、グールドは舞台裏で苦笑していたという。今ではそのスピーチ全文すら入ったライブ録音が... 続きをみる

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  • グレン・グールドと『草枕』(1)

    1964年コンサート活動から引退しスタジオ録音だけになったが、1967年カナダのアンティゴニッシュからトロントに帰る列車で、同じ列車に乗車したフォレイという大学教授が自己紹介し話してもいいかととずねてきた。グレン・グールドは了解し、彼と雑談を始めた。その話の出だしが今読んでいた英訳された漱石の『草... 続きをみる

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  • 古楽に接近したアバド指揮モーツアルト管弦楽団の『ハフナー』

    アバド(1933-2014)は晩年の2004年にイタリアにモーツアルト管弦楽団を設立して、一連のモーツアルトの交響曲の録音をした。ある面ではモーツアルトの交響曲の演奏の総仕上げであったわけだが、フアンの予想に反して円熟ではなくて古楽器奏法というアバンギャルドへの転向表明であった。 アバド73才の転... 続きをみる

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  • 『コーダの思想』ホーネック指揮フランクフルト放送交響楽団のドボ8番

    ドイツのオーケストラの公開配信の充実ぶりが凄い。日本人はブランド志向だから絶対に認めないのだろうが、これもバルセロナのオーケストラの公開配信で、ポリーニ父子共演のベートーベンのピアノ協奏曲5番の演奏が凄い。何種類かの『皇帝』のポリーニの演奏中でポリーニが一番乗っている演奏だ。スペインの地方オーケス... 続きをみる

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  • 楽譜にない装飾音符を演奏したヘルベッヘ指揮フランクフルト放送交響楽団のモーツアルト38番プラハ

    これはフランクフルト放送交響楽団の公開配信したユーチューブで、この手のものは意外に名演がある。古楽器奏法の大家ヘルベッヘの指揮で、モーツアルトの交響曲38番プラハの演奏だが、ヘルベッヘの指揮が見られるというのもお宝映像ながら、最大の見っけ物があった。 モーツアルトの交響曲の第三楽章メヌエットでは、... 続きをみる

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