続パスカルの葦笛のブログ

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ブリュッヘン指揮18世紀オーケストラのベートーベン3番

ブリュッヘンはハイドンからベートーベンへの交響曲の発展は実に明解であるという。ベートーヴェンの1番はハイドンの模倣で、それだけ交響曲の発明家の行き届いた理解がなされている。


通常は2番から3番への飛躍はロマン・ローランの傑作の森伝説で、凡人から天才の飛躍であったとされている。1番2番は凡人ベートーベンの駄作ということになる。若書きの1番はともかく、2番の駄作はなるほど演奏されない作品ということで納得できるか。これが戦前の理解だった。


しかしクレンペラーの2番の演奏を聞くと、駄作説はいささか違うか。むしろ1番と2番との間にこそ飛躍がある。ミッシングリング、断絶がある。2番と3番はそう遠く隔たっていない。2番のベートーベンが素材のナポレオンという特異な人物と出会うことで書けたのが3番でなかったか。2番はハイドンの模倣者を克服していたのだ。


ブリュッヘンは1987年、53歳の時の演奏。


第一楽章。
152小節の反復の実行も当時は斬新だった。伝統的な反復省略で、ほとんどの指揮者は反復の中にあつたsfpの音を演奏していなかった。ヨッフム・朝比奈隆・ブリュッヘンで初めて耳にする音であった。


154小節のファゴットで、ベーレンライター版の楽譜は第一バイオリンのメロディーが演奏されていたことが判明された。
しかし1987年のブリュッヘン指揮18世紀オーケストラはどうゆうわけかファゴットのメロディーは無しである。ブライトコップ版の現状通りである。
 ブリュッヘンが自筆譜を見落としたか、ベーレンライター版が不適切なのか、議論のあるところだ。


第二楽章。
30小節のチエロで、1987年当時、ブリュッヘンはベーレンライター版新発見のsf記号はクレッシェンドの間違いを指摘していた。
ベーレンライター版の新発見ではなくブリュッヘンの新発見ということになるのだろう。



第四楽章。
面白いのは250小節の演奏で、ブリュッヘンは音楽学者の新説発表会ではなく、あくまで演奏家としてテンポを速めて楽しんでいることだ。
前頁246小節からアッチェレランドして、250小節モルト・アッチェレランド(さらに一層加速)して演奏していた。これはブリュッヘンの演奏家として諧謔を楽しんでいた。18世紀の演奏家がそういう演奏をしていたということではなかろう。


お茶目なブリュッヘンということになろう。