続パスカルの葦笛のブログ

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ミナーシ指揮ザルツブルグ・モーツアルテウム管のモーツアルト40番

小林秀雄の『疾走するモーツアルト』を、母親から子守歌のように読み聞かされていたらしく、ト短調の疾走するメロディーから、ミナーシは演奏を開始した。日本ではモーツアルトは疾走するテンポがモーツアルト演奏なのだと言い聞かされたか。それほど速い。しかし井上道義は、同じオーケストラで遅いモーツアルトであった。


第一楽章の疾走するアレグロは、やがて40小節に至ると突然pに変化した。42小節では、暗転してリテヌートでテンポは落とされた。
44小節ではラレンタンドで遅いテンポ、49小節の弦は4分音符だかアッチェレアンドで加速され、50小節でア・テンポ(元の速さに戻り)、51小節のクラリネットでアッチェレランドで加速、55小節のフルートでラレンタンド(遅く)なり、557小節のクラリネットの下降旋律でテンポが速められた(アッチェレランド)。変幻自在のアゴギークが駆使された。


211小節の縦線の上で、ワルターやフルトベングラーがやっている間を、やっているのがこの人の面白いところだ。古楽器奏者なら絶対排除するところだろう。


第二楽章。
28小節のクラリネットで、最後の2つの36分音符をテンポを落として演奏させている。結構執拗にそうしている。


第四楽章。
141,143,145小節の低弦、コントラバスで、ミナーシはコントラバスを弓を叩きつけて弾かせて、太鼓でも鳴っているような異様な大音響を出させている。
何でそうなるの。大天才の技としか言いようのない演奏になった。


シャンドール・ウェーグとは違う意味で、ザルツブルグ・モーツアルテウム管弦楽団にモーツアルト演奏の一時代をもたらす人なのだろう。面白いモーツアルト演奏では当代のずば抜けた才人である。