続パスカルの葦笛のブログ

FMラジオやテレビやCDのクラシック音楽の放送批評に特化したブログです。

追悼・飯守泰次郎指揮仙台フルのブラームス1番空前の大爆発

2023年8月15日、飯守泰次郎が死去されたようである。82歳の長寿、ここ十年の円熟した指揮活動、4月にはブルックナー4番を指揮し、慶賀に耐えない晩年であった。


ここで思い出すのは、飯守泰次郎が仙台フィルを指揮したブラームス交響曲1番の演奏ではなかったか。(2020・2・14)数々の名演があったわけだが、一期一会たった一度しかない名演といえば、仙台フィルのこの演奏を挙げなければならない。飯守泰次郎の、「ここだけよ」というリップサービスがないわけではないのだろうが、普通でないリップサービス、仙台フィルだけに見せた逸脱したサービス過剰の一端をご覧あれ。


運が良ければ、FMで再放送という幸運に恵まれるかもしれない。


第四楽章。
334-335小節のテインパニで、飯守泰次郎指揮仙台フィルは、管楽器に合わせて加筆させている。原型はミユンシュ指揮ボストン交響楽団で、小沢征爾に次いで踏襲している。


これは360,362,363小節のテインパニの加筆も同様である。しかも飯守泰次郎指揮仙台フィルは、360-366小節で相当テンポを落とすのである。


いよいよオーケストラが炸裂する375小節がやってくる。
375-380小節のテインパニで、<sf>の形が3回繰り返されるが、飯守泰次郎ほど強調した人はいない。見事なsfの音を堪能したい。
次頁の冒頭、飯守泰次郎のデフォルメこそ人語に落ちない逸脱である。
384小節のsfの音も強烈である。
388小節までテインパニはトレモロで打たれ、どちらかというと389小節のアクセントの付いた4分音符の方が強く聞こえる。
しかし飯守泰次郎は、金管に合わせてトレモロを止めて一打の強い音で演奏させている。世界中でこう演奏させている指揮者は唯一者で、ここで世界中の指揮者の頂点に立っているのだろう。よくもこういう発想が湧くのに驚嘆させられるのである。これこそ一期一会のとっておきの演奏となった。


まあ後日本人もやり過ぎと感じたのかも知れないが、もう二度としなかった。