続パスカルの葦笛のブログ

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決定盤だったケルテス指揮バンベルク交響楽団のハイドン104番

今日は良いものを聞かせてもらった。名演と名高いエッシェンバッハ指揮ロザーヌ室内管弦楽団の演奏のオリジナルが、このケルテスの演奏だったという発見と、ハイドンの交響曲104番の演奏の決定盤がケルテスの録音だったことの発見である。


多分ケルテスの104番の演奏が名演であることも世評にはなく、話題に上らなかったと思う。しかもケルテスの演奏が31歳であり、この歳でハイドンの演奏が完璧に確立されているということは驚異である。(さすがにハンガリーのハイドンというべきか。)


80歳の老巨匠エッシェンバッハが31歳のケルテスの演奏を模範にしたわけで、さらなる驚きであった。これは当時話題になったわけで、その話題をエッシェンバッハは忘れなかったわけである。将来104番を演奏することがあったら、ケルテスで演奏しようと思ったかけだ。その間に世間では、ケルテスの名演は忘れられたのである。


第二楽章。
114-117小節のフルートを、エッシェンバッハ指揮ロザーヌ室内管弦楽団の演奏がラレンタンドでテンポを落として演奏していた。
その実オリジナルの演奏はケルテス指揮バンベルク交響楽団であったわけだ。31歳のケルテルがやるか。そういう演奏の素地がハンガリーにあるのだろう。ハイドンの蘊蓄の蓄積があるのだ。青年ケルテスがやっているわけではないのだ。


第三楽章。
31-34小節に至るテインパニの長いクレッシェンドで、エッシェンバッハは34小節で急激に強めるのだ。
実は何とケルテルがオリジナルであった。


以上二点で前後の演奏の影響が判明したわけである。


これで終わらないのが老巨匠エッシェンバッハで、最後で決めた。
331-332小節と333-334小節の結尾に違いを出した。巨匠の味だろう。さすがに若いケルテスはこのような逸脱は遠慮して素直に楽譜通りに終えた。


3日文化の日、NHKは二時間特番で市川猿翁の特集をやっていた。歌舞伎舞踊『黒塚』を全曲放送して感銘深かった。山奥に住む老婆が鬼に変身した時鬼の隈取りを、暗闇で顔に懐中電灯を照らして恐怖感を出す効果を採用して、市川猿翁(市川猿之助)はライトを照らして鬼の隈取りを強調した。一生外連味を出すことが歌舞伎の本質だと確信していた市川猿翁の名演であった。


何か良いものを得た数日だった。