続パスカルの葦笛のブログ

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アゴギークの極地デュメイ指揮関西フィルのモーツアルト40番

デュメイの40番は、年間名演ベストテンのベストワンに輝いた。とりわけ第四楽章は名演だった。


今回のデュメイの40番の演奏のコンセプトは緩急の対立にあった。急速な演奏のためにその後の緩和が目立って名演に感じられた。関西の落語の名人に緊張の緩和が笑いを誘うという理論があったが、名演の壺もそんなところにあったのだろう。


デュメイは楽章の開始は恐ろしいくらい速いのだった。その後に緊張の緩和があるという企みがあったのだ。


第四楽章の開始も恐ろしく速かった。71小節の第二主題に入ってデュメイはようやくテンポを落とした。101小節の低弦のfもずしんと重く感じられた。


展開部の125-132小節が演奏の頂点だった。
デュメイは128-130小節で125ー127小節の2倍の遅さに落とした。ここからアゴギークの極地となるのである。
132小節はさらに3倍の遅さに落とした。
ルネ・ヤコブス指揮フライブルグ・バロック・オーケストラは133-134小節の木管でラレンタンド(テンポを落とす)をしている。
そして2人は135小節でア・テンポ(テンポを戻す)をしていた。
132小節の恐るべきデュメイのリテヌートで勝ちと判定した。


147小節以下のホルンのfも強調されて素晴らしい効果であった。


191小節でテンポが戻され、202-203小節で気が狂ったようなリテヌート(テンポの落ち込み)を掛けて、聞く者を動転させる。
                               202-203のrite.


それは204小節でアッチェレラント(加速)されて、206小節でア・テンポ(元のテンポに戻る)される。
ルネ・ヤコブスでは204小節でポコ・ラレンタンド(少しテンポを落とす)にしている。デュメイがテンポを速め、ルネ・ヤコブスがテンポを落とす、と正反対の演奏をしているのが面白い。2人はその後でア・テンポにしている。


271小節以下のホルンをトン・コープマン指揮N響とデュメイがsfで強調している。277小節の低弦を2人が強調している。


予想外のデュメイのアゴギークが名演の基礎となったと言えよう。