続パスカルの葦笛のブログ

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侮れないクレメンス・クラウス指揮VPOの『ジュピター』

この人は何故VPOに持てるのか不思議でならない。ワーグナーの『指環』など噴飯ものだろうが、どういう意味で重用されるのか不思議でならない。


さて、面白いのは東西で、モーツアルト嫌いの貴族で、ウィーンで観劇日記を残していて演目が貴重なモーツアルト資料になっているのだが、大名で歌舞伎の膨大な観劇日記を付けている人がいる。ベートーベンと葛飾北斎が、ウィーンと江戸の東西で頻繁に引っ越しを繰り返している。天皇になれない弟が寺の住職になり、国王の弟が教会の枢機卿になり、結婚が出来ない神父なのだが実際は妻子がいた。やんごとなきご落胤がクレメンス・クラウスなのだという。ハプスブルグ家は婚姻で領土拡大を図ったので、王国が減少して王族のスペアが膨大な数になり、ついに戦争と敗戦で王家が廃止になったが、王制廃止を悔やんだそうだ。


というわけで、VPOの指揮台にクラウスが立つとどことなく品がある。洗練された指揮ぶりは何をしなくても様になった。見ているだけでうっとりした。そういう視覚的効果が失われて無能指揮者に見られるようになった。


それだけで終わらなかったのがクレメンス・クラウスだった。モーツアルトの『ジュピター』は凡庸な指揮者の意外な一面を知らしめている。第三楽章にクラウスの異才が光った。
ダ・カーポで冒頭に反復する時に、クラウスの異才が光った。
ここはテンポを落とすのが定石になっているようだ。


1 ジョージ・セル指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団、1957年録音。
2 コンビチュニー指揮ベルリン放送交響楽団、1959年録音。
3 クラウス指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、1940年代録音。


セル、コンビチュニーがテンポを落としているが、クレメンス・クラウスが一番納得がゆくのである。この一点を見ても、この人は侮れない人なのだなあと思った次第である。