フルトベングラーの影響を受けたヤノフスキ指揮NHK交響楽団の『グレイト』
83歳の巨匠ヤノフスキは増々ロマン主義と円熟を増している。フルトベングラーの衣鉢を継ぐことをもはや隠さないのである。堂々とその影響を告白した名演だ。シューベルトの交響曲8番はそんな名演であった。
第一楽章。
それは先ず566小節のテンパニに現れた。
新全集版では566-567小節はトレモロではなくて、2分音符4つということになった。
アバドの新全集版、フルトベングラー指揮ベルリン・フィル1942年、マーグなどは2分音符4つで打たせている。
今回のヤノフスキ指揮NHK交響楽団は、その中間の、第一拍目は2分音符で打たせたが、それ以降は従来通りのトレモロにしていた。
第四楽章。
745-751小節のテインパニは、フルトベングラーの加筆を丸まる踏襲していた。
これは大胆な試みである。6小節にわたってフルトベングラーの加筆を実行したのである。最近の現存指揮者では類例のないもので、ヤノフスキ以外にはテインパニの音は聞くことが出来ない。いかにヤノフスキがフルトベングラーを尊敬しているかという現れであろう。
この老齢に到達して、自分の好きなようにしたいという心境、信仰告白と聞くことが出来るのである。
ちなみにフルトベングラーは1942年段階でシューベルトの自筆譜を見ていて、新全集版に先駆けて発見をしている。単なるロマン派とはかたずけられない学者でもあるのだ。