続パスカルの葦笛のブログ

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メンゲルベルクのベートーベン交響曲3番(1)

このエロイカは、全集版のエロイカ(1940・11・11)のスタジオ録音ではなく、1942・3・5の録音である。


この頃の録音はスタジオ録音だからレコード録音のために素晴らしい音で録音されているかというと、必ずしもそうではないのが不思議なところである。


当時はライブ録音に失敗したために、数か月後改めてスタジオ録音で取り直した。このエロイカは後にSPレコードで発売された。音質と内容共に万全を期したものであった。


しかし実際に聞いてみると、不満が残る。万全を期していないと思う。というわけで1940年のチクルスに近い1942年のライブ録音を選んでみた。この演奏は素晴らしかった。


第一楽章。
35-36小節のバイオリンのcresc.が素晴らしい演奏だ。


85-86小節のフルートのポコ・リテヌート(少しテンポを落とす)も良い。そして91小節のフルートのポコ・ラレンタンドも素晴らしい。93-94小節のオーボエのリタルランドという大きなテンポの落としなどメンゲルベルクの白眉だろう。


142小節のホルンとトランペットの加筆はメンゲルベルクの独自な味だ。208小節のトランペットのcresc.をメンゲルベルクは強調している。


329小節のクラリネットでメンゲルベルクはラレンタンドさせてテンポを落とさせている。


580小節の第一バイオリンにメンゲルベルクはラレンタンドさせて8分音符を木管の4分音符と等価値にさせている。このテクニックは、ニューヨーク・フィルの演奏以来のもので、またクナッパーツブッシュも生涯エロイカの演奏では踏襲している。エロイカ演奏の肝だろう。


668小節のテインパニでは、メンゲルベルクは第1拍に4音符を加筆して打たせているのが気になった。


この演奏の音源はユーチューブにあげられているので、ぜひ楽譜に記入して実演をご鑑賞いただきたい。