続パスカルの葦笛のブログ

FMラジオやテレビやCDのクラシック音楽の放送批評に特化したブログです。

ポリーニ父子共演のベートーベン『皇帝』

2014・11・14スペインのガリシア交響楽団で、息子ポリーニ指揮でマウリッツオ・ポリーニのピアノでベートーベンのピアノ協奏曲5番『皇帝』がユーチューブで配信されている。ポリーニ72歳、最新の現状報告ではあるまいか。もうすっかり老人だ。今年は生誕80歳祝賀でCDなども出ているが、回顧的なものだ。


ということで、これが一番最近のポリーニの現状報告らしい。これがとても面白い代物になっている。


一番ショックなのが、なぜスペインの片田舎のオーケストラの公演なのか、指揮者台を上下通過してピアノの椅子の所に行く姿で、老人が高い指揮者台を靴で踏む姿は普通の老人でも危ないはずだ。しかし全然意に介しない。


2人の正体が暴露されてしまったているのだが、若手指揮者のオーバーな指揮ぶりは決してうまくないのだが、演奏が終わるとポリーニ翁が青年に抱き付く姿は異様である。


息子はピアニストで指揮者で、イタリア国内ではけっこう父子共演はあるらしい。息子が指揮に呼ばれると、喜んで出掛けるらしい。息子を呼ぶと、父親まで協奏曲を弾きに現れる。つまるところ親バカなのである。その手でわざわざスペイン旅行になった。


ある面で数種類ある『皇帝』で一番面白い。


うなりながら弾くポリーニはグレン・グールドさながらである。
何度も腰を上げて鍵盤を叩く姿は、老齢化・パワー・ダウンの表れなのだが、この姿が楽しめる。40代50代が絶頂期なのだが、72歳で年齢に抵抗して往時を凌いでいるわけだ。自分ではそう思っているのがいい。半面では哀れな姿といえなくもない。年を取るということは体力は落ちるが、頭脳は明晰になるとも言える。


確かに72歳のポリーニは進化をし続けている。
第三楽章の331-333小節で、ポリーニは別バージョンでピアノを弾いていた。
楽譜が以上のように16分音符の連弾なのだが、ポリーニは弦のパートと同じに弾いていた。これは別バージョンの楽譜をポリーニが弾いているということだ。


これはステーヴン・ハフがペトレンコ指揮オスロ・フィル(2018)で別バージョン版の『皇帝』を弾いていたが、ポリーニは2014年でさらに4年早い。老いてもなお進化しているポリーニが出ている。


これはぜひCD化を願う価値があるというものだ。