続パスカルの葦笛のブログ

FMラジオやテレビやCDのクラシック音楽の放送批評に特化したブログです。

ヨーロッパ最先端の流行を取り入れたコロン指揮フィンランド放響の『ジュピター』

今ヨーロッパではルネ・ヤコブスとピションが最先端のモーツアルト像を描き出すと言われている。


コロン(1983-)は既成オーケストラでピリオド・オーケストラに様変わりさせたのも凄い。


なにより凄いのはピションの最先端のモーツアルト像を再現させた手腕だろう。


第一楽章が一番力が入り成功していた。
21小節のテンパニで前半ppで後半ffはほとんどピリオド奏法の定石になっていて、コロンも踏襲していた。


46小節でコロンは急にダイナミクスをppに弱めるが、ピションの特色にこういう大胆な変化がある。


83-84小節のテンパニで、コロンは以下の大胆な変化を与えている。
漫然と聞いていても何か工作している感が感じられる。


212小節の縦線でコロンはフェルマータを付けて長い間を与えていたのが印象的であった。


253小節のフルートで、トリルの付いた所で。ピションとコロンはフェルマータを付けてかなり長いトリルを演奏し続けた。
こうして見ると、ピションの影響は強いのだな。


第三楽章。
新モーツアルト様式の特色はメヌエットに有り、やはり最大の眼目があった。


トリオに入り、84小節のフルートで、ピションは装飾音符を付けて演奏させたが、コロンは反復で踏襲した。
楽譜にない装飾音符の付与こそ新モーツアルト様式の眼目である。


そういう点で山田和樹は世界に通用する唯一のモーツアルト指揮者で、最近イギリスのオーケストラの指揮者になったが、日本でやったことをイギリスでもやったら必ず評価されるはずである。むしろ日本でやったことの二倍オーバーに表現したほうが良い。どぎつく表現するか、萎縮するかで、天下の分け目だろう。


さて、反復してFine.の手前51小節で、コロンは面白いことをした。アルノンクール指揮ウィーン・フィルの『ジュピター』は何度も演奏しているのであるが、サントリー・ホールの演奏で、唯一アルノンクールは変化球を投げて、日本の聴衆にサービスした。
まさかコロンはサントリーホールの演奏を聞いたのではあるまい。コロンはラレンタンドを掛けてテンポを落としたのだ。いささかアルノンクールとは異なるのではあるが、テンポを落とすということでは軸を逸にしている。コロンの異才を示している。