続パスカルの葦笛のブログ

FMラジオやテレビやCDのクラシック音楽の放送批評に特化したブログです。

クレンペラーのベルリオーズ『幻想交響曲』考

1963年9月17・18日、クレンペラーは珍しいフランス物でベルリオーズの『幻想』交響曲を録音している。これは1962年にクレンペラーが演奏会で指揮した時にロンドンの聴衆から熱狂的な歓迎を受けて、翌年に録音することになったという曰く付きの代物であった。


つまりロンドンの聴衆の反応に驚いて、急遽録音することになった。さて録音されたレコード(CD)聞いて見ると、どこが熱狂的な反応を引き起こしたのか、しごくまともな平凡な演奏であった。


ところで、最近ユーチューブで1966年のライブ録音によるベルリオーズの『幻想』交響曲が紹介された。そしてもう消されてしまったのであるが、これがとんでもない超名演なのだった。


直感的に、1962年の『幻想』交響曲のライブと同じ演奏だなとおもった。ライブと録音とでは大幅に異なっているのだ。録音は例によってレッグ製作のもので、彼という庭師の手入れでクレンペラーの野趣に満ちた魅力が刈り入れされて大人しくなったイングリッシュ・ガーデンを見ることになってしまった。残念である。1962年と1966年とが同じコンセプトの演奏である可能性はむしろ大だろう。そういう不満と要求があり、1966年の再演が実現されたものだろう。ということで、1966年の演奏を聞いて伝説的な1962年の演奏を追想して見たい。


第三楽章、119小節以下のクラリネットであるが、クレンペラーは独自の見解で独特のタイ記号を付して演奏させているのが目立った。
120小節のクラリネットで、同じ音をタイで繋げて音を伸ばしている。以下同じである。


さらに凄いのは、145小節で、第一バイオリンを上記の木管のフレーズを弾かせていた。
現存の指揮者では類例のない演奏である。


実はこれはワインガルトナー版『幻想交響曲』を使用している証拠となっている。これは凄いと言わざるをえない。ベルリオーズ・リストという系譜を知っている人でなければかなわない手管なのだ。つまりベルリオーズ・リスト・ワインガルトナーという系譜が押さえらるることになる。そしてベルリオーズ・リスト・ワインガルトナー・クレンペラーと系譜が繋がるわけである。


ロンドンの聴衆がそんな事情を知るわけもないだろうが、クレンペラーにはロンドンの聴衆がそれを分かつてくれるという期待がある。そして見事に相互が理解し合ったのではなかろうか。


もう少し長くユーチューブに上げて、広く聴衆に聞いてもらいたかった。