続パスカルの葦笛のブログ

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リヒアルト・シュトラウス、ドレスデンの至芸を披露するルイージ指揮NHK交響楽団の『ドンファン』

ベートーベンのヴァイオリン協奏曲ではソリストはコンサートマスターの席に座って演奏するのが伝統であるとか、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団には様々の伝統が生きている。ベートーベンの8番、ブラームスの4番もこのオーケストラ独自の楽譜がある。ホルンはベルリーズ由来の楽器が使用される。ディドローの『百科事典』に引用されたオーケストラのレイアウトはドレスデンのオーケストラのものであった。つまり最古のオーケストラであったとか。等々枚挙にいとまがない歴史の垢がある。


リヒアルト・シュトラウスの演奏にもドレスデンならではの伝統がある。今回ルイージはフリッ・ブッシュ由来の伝統的解釈を踏襲したようである。当然それはリヒアルト・シュトラウスの伝統に起因しているわけである。


交響詩『ドンファン』の練習番号Nの13小節以降の変幻自在なテンポの揺れがあったが、これなどもドレスデンの至芸と呼ぶしかない演奏であった。
13小節の始まりはほとんどpppで聞こえないくらい弱音で、すぐpに転じ、4ブロックかたはfでかつアッチェラランドを掛けて加速された。まったく楽譜は無視されている。これがドレスデンの至芸といえる伝統的な演奏である。22小節のホルンで、4分音符を8分音符で短く演奏するのはフリッ・ブッシュ指揮ドレスデン国立歌劇場管弦楽団の演奏で、ブッシュ以来ドレスデンの伝統的な解釈とされている。ルイージ指揮NHK交響楽団も踏襲した演奏となった。その分だけ休止符が大きくなり寸止めがなんともいえない魅力を出した。