続パスカルの葦笛のブログ

FMラジオやテレビやCDのクラシック音楽の放送批評に特化したブログです。

へそ曲がり大王エーリッヒ・クライバーの『グレイト』の名演1

エーリッヒ・クライバー指揮北ドイツ放送交響楽団の1954年の演奏は究極の『グレイト』と言ってもいいかもしれない名演だ。ベームが親父も変わった男だったと語っていたが、親子鷹でもあれば親子変人だったことも分かる。そして父親があれほどまでに名演をものしたのだから、カルロス・クライバーにも向いていた音楽であり、演奏しなかったことが残念でならない。


『グレイト』の両端楽章は傑作である。


第一楽章。
94小節のテインパニのffは格別な音がするが、これを受けてバイオリンがアッチェレランドで演奏を速めているのが面白い。
98小節のテインパニのfzも凡庸な処理をしていない。


126-128小節の弦で、f<ffとダイナミクスを与えているのがクライバーだ。
面白いのが127小節で、フルトヴェングラー以来ここでクレッシェンドするのが正統派の伝統らしい。


さて201-202小節のトロンボーンだが、新全集版のアバド以来ほとんど楽譜の引き伸ばしが実践されたいないのだが、ウィーンにゆかりのある名指揮者たちは古来からシューベルトの自筆譜を見ていて、新全集版が出版される前から修正して演奏している。フルトヴェングラー。クナッパーツブッシュ、クライバーと全員がアバドのように引き伸ばして50年70年前から演奏している。
しかし現役指揮者はアバド以外は何故実行しないのか不思議である。もちろんクライバーも引き伸ばして演奏している。


次に566-567小節のテインパニで、旧来の楽譜はトレモロになっているが、新全集版は2分音符4つらしいのである。
日本で演奏されるものは、旧来からトレモロで演奏されつが、シューベルトの自筆譜を見ている古い巨匠たちは2分音符4つを50年前から演奏していることだ。
もちろんエーリッヒ・クライバーも新全集版の出版される前から演奏している。実に不思議な現象である。