続パスカルの葦笛のブログ

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へそ曲がり大王エーリッヒ・クライバーの『グレイト』の名演2

シューベルトの交響曲8番『グレイト』の名演は、フルトヴェングラーとクナッパーツブッシュということになるが、そこにエーリッヒ・クライバーを入れて、この名曲を論じるとき、この三人の指揮者は論じなければどうしても手抜かりということになろう。


どうしてエーリッヒ・クライバーが抜け落ちたのだろうか。とりわけ第四楽章の演奏は掛け値なしの名演にして、誰にでも感銘を与えるのではないか。


第三楽章は凡演で、どうしてこの奇才がアプローチ出来なかったのか不思議である。その代わり第四楽章は、音が悪かろうが奇才の手腕に感銘を受けるものがある。


演奏が20小節に至ると、ここからフルトヴェングラーはアレグロにどんどんテンポを速めるのだが、同類といわれるクナッパーツブッシュがリテヌートで逆にテンポを落とすのである。
良く逆も真なりと言うが、その通りなのだ。この二人は同じ穴の狢なのだが、アプローチを異にする。面白い現象だ。どちらが正しいという問題でない。正解が二つ出て、後はその人の好み次第ということだ。


それならここはフルトヴェングラーの演奏を取りたい。シューベルトのfzのダイナミクスは速いテンポだからこそ効果を持つのだろう。そしてこのfzに意義を認めたのがエーリッヒ・クライバーで、28小節までのfzに特別な効果を出している。


エーリッヒ・クライバーのfzを堪能あれ、と言いたいほどだ。


338小節の解釈もエーリッヒ・クライバーの独壇場である。
金管の強奏を受けて、大きな間の後338小節のテインパニの強打が凄い。よくもこんな解釈が出来るものだと唸らせる。


全く同じことが614小節にも言える。
ここは金管の2分音符3つを、テインパニに打たせている。これも凄い解釈で、エーリッヒ・クライバー唯一の解釈であろう。


ところで面白いのは、ロイブナー指揮NHK交響楽団がここからリテヌートを掛けてテンポを落としている。


同工異曲の解釈で、エーリッヒ・クライバーといいロイブナーといいウィーンの指揮者だ。これがウィーン趣味なのだと云えれば言えるのであろう。


Oエーリッヒ・クライバー指揮北ドイツ放送交響楽団シューベルト交響曲8番『グレイト』1954年録音。