続パスカルの葦笛のブログ

FMラジオやテレビやCDのクラシック音楽の放送批評に特化したブログです。

ノリントン指揮シュトゥットガルト放送交響楽団の『田園』

ロジャー・ノリントンがシュトゥットガルト放送交響楽団(1998-2011)で、ベートーベン交響曲6番『田園』を演奏した2002年ライブ録音である。2021年11月に引退したので、最も脂が乗りきった頃の演奏ということになる。ピリオド奏法の全盛期で、もう20年が経過した。鈴木雅人が古楽器楽団を解散し、モダン・オーケストラの指揮者に転向したということは、ピリオド奏法の栄枯盛衰を物語っていると言うべきか。


秋の夜る辺のもの淋しさを感じないでもないが、そこで古楽器奏法の巨匠ノリントンを追想して往時の演奏を聞くのも一興かと思う。


第一楽章。
聞いてみると、ノン・ビブラート奏法という演奏スタイルを確立して、シユトゥットガルト・サウンドとして有名になった演奏は意外に豊かだった。冒頭の3小節後半ではラレンタンドをしている予想外の演奏となった。
古楽奏法の巨頭のノリントンはアゴギーク(演奏の伸縮)をしているのだ。この演奏法は必ずしもピリオド奏法ではご法度ではないのだ。これが意外な印象である。


まったくロイブナー指揮NHK交響楽団と同じ演奏だった。


66小節になると、ノリントンはチエロをfで強奏させているが、これもまたワインガルトナー指揮ロイヤル・フィルの演奏と同じだった。


235-236小節のファゴットでは、ノリントンは<>といったクレッシェンド・デクレッシェンドで演奏させている。
これは凡百の古楽器演奏家には出来ないものだ。ワインガルトナーは教則本でリテヌートにしろと教訓をたれているが、ノリントンはこの本を読んでいるのが明白である。


2人は今度は345小節ではラレンタンドまで同じにしている始末だ。


ワワインガルトナーとノリントンが同じようにここでテンポを落としているのが不思議な気がする。ウィーンの巨匠の生まれ土地に相応しい指揮者の伝統を配慮している。


362小節のホルンをfで強調しているのがノリントンとロイブナーである。ノリントンが古楽器奏法で割り切れない複雑さを持っている指揮者なのだ。そこに奥深しさを感じざるろえない。


第四楽章でも、174-177小節の低弦をロイブナーがffで強調しているのだが、ノリントが同じことをしている。


とてもノリントンは古楽器演奏のプロパーの指揮者では収まらない凄さを持っていた。