続パスカルの葦笛のブログ

FMラジオやテレビやCDのクラシック音楽の放送批評に特化したブログです。

『コーダの思想』ホーネック指揮フランクフルト放送交響楽団のドボ8番

ドイツのオーケストラの公開配信の充実ぶりが凄い。日本人はブランド志向だから絶対に認めないのだろうが、これもバルセロナのオーケストラの公開配信で、ポリーニ父子共演のベートーベンのピアノ協奏曲5番の演奏が凄い。何種類かの『皇帝』のポリーニの演奏中でポリーニが一番乗っている演奏だ。スペインの地方オーケストラという名前で、もう聞く気がしない。アバドだウィーン・フィルだとこだわりたい。


ホーネック指揮フランクフルト放送交響楽団で、ドボルザークの交響曲8番の演奏が凄かった。ホーネックは相変わらず冴えない男である。少しもカリスマ性がない。だから有名ブランドのオーケストラに登場しないときている。多分ホーネックの容姿を見るのは初見ぐらいだ。この男ぶりでは人気は出ないな、ということになる。そんな男が曲の最後に狂乱した。最後の最後の土壇場で狂気を発したといえばいい。これには感動した。そしてこの人はコーダに命を賭けているのだと思った。そう思った時、フルトヴェングラーが降臨した。「あっ、この人に近い人なのだ」と思った。


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フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルで、シューマンの交響曲4番の演奏だ。
シューマンの4番フィナーレのコーダだ。223-226小節のフルトヴェングラーの凄まじい演奏である。226小節のテインパニで、フルトヴェングラーは4分音符を8分音符で打たせて、2倍に加速している。224-225小節も実は2分休止が4分休止になっているから、2倍に速度が加速されていることになる。


ホーネックは、それをやっているわけだ。


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ドボルザーク8番フィナーレ。369-372小節の4小節をホーネックはカットして演奏している。実はこれがよく分からない。ホーネックにとっては蛇足なのだろう。そして373-376小節でポコ・リテヌートと少しテンポを落とすのだ。その為だったかも知れない。377小節からア・テンポで元のテンポに戻った。そして最後のチャン・チャンと締めを括ると思いきや、ここで狂ったように加速した。
383-385小節を一気にアッチェレランドして締めくくった。これは指揮棒で不可能でホーネックは体で体現した。


385小節など、チャン・チャンと落ちになるわけだが、ホーネックは三連音の頭アクセントで強い落ちになっていない。これが又良い。狂乱の内に終わる呈であった。


ああ、この人フルトヴェングラー降臨を目指している。と思った次第である。フルトヴェングラー様式といおうか、『コーダの思想』を体現している。