続パスカルの葦笛のブログ

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天才コルビェーン・ホルテ指揮ノルウェー放送管弦楽団の『未完成』

シューベルトの歌曲『魔王』レ-ガー編曲版を使用するところから、この人は尋常ではない人物である。案の定シューベルトの交響曲7番『未完成』の演奏は尋常ではなかった。


コルビェーン・ホルテ(1973-)はノルウェーのバイオリニストで指揮者である。1974年にオスロー音楽院の教授になった女流バイオリニストのカミラ・ウィツクス(1928-2020)が、ルイジアナ大学で教えているので、1991-1997年に師事した。1999年にバイオリニストとしてデビューした。その後ノルウェー放送管弦楽団のコンサートマスターになり、やがて2013年に指揮者に転向した。指揮者としては9年の経歴があるのだが、これほどの逸材が野に放たれたのであるが仄聞には及なかったのでる。


今夜こうして未知の指揮者の『未完成』を聞きに及ぶに至り、何の噂にもならなかったのは驚きである。


『未完成』第一楽章29-30小節はホルンを強調したいわけだが、同じ音型のクラリネットを強調したのがワルター指揮ニューヨーク・フィルの演奏とホルテであった。


44小節のチェロを52小節までppをfで演奏させていたし、57小節の第一バイオリンを真中でfに強調したのは印象的であった。


99小節のフルートをpからfに変えたのはフルトベングラー指揮ウィーン・フィルの演奏で、ホルテもそうしている。182小節の第一バイオリンの後半からシノポリ指揮フィルハーモニア管弦楽団がffで強奏していて、ホルテが同調していることに気づいた。


続く192-196小節のテンパニを、シノポリとホルテが加筆しているのであった。
ここはシノポリの演奏の白眉であって、余人を寄せ付けない独創が発揮されたが、それをホルテが追従しているわけだ。


尋常でないホルテの演奏の秘密である。凡百の指揮者では真似が出来ないのである。


第二楽章。
113小節の低弦をワルター、シノポリ、コルテがfで強調した演奏が続くが、印象深い。


173小節でホルテはテインパニに加筆をして驚かせたが、ここはホルテの独創的な解釈で、現存する指揮者では唯一の天才と呼ばざるをえないものだった。
このテンパニの加筆にホルテを天才と呼びたいのである。


オスロ・フィルにはマケラが常任指揮者としているわけである。世界のオーケストラの中心がオスロにある。アンスネスというピアニストがいる。突然音楽の中心がオスロになった。これはどういうことだ。


Oコルビェーン・ホルテ指揮ノルウェー放送管弦楽団シューベルト交響曲7番『未完成』(2019・11・29)