続パスカルの葦笛のブログ

FMラジオやテレビやCDのクラシック音楽の放送批評に特化したブログです。

年末恒例の第九はアーベントロート指揮ゲルハルト・ボッセ(コンマス)ライプツィヒ放送交響楽団1953年

バイオリニスト・指揮者のゲルハルト・ボッセは1951-1954年の間ライプツィヒ放送交響楽団のコンサートマスターを務めていた。名指揮者アーベントロートの指揮の下でコンサートマスターを務めていたのだった。


そして1953年、アーベントロートが指揮したライプツィヒ放送交響楽団で、ベートーベンの交響曲9番『合唱付き』を演奏したのであった。(1953年1月6日)
ゲルハルト・ボッセがコンマスを務めた1953年のアーベントロート指揮の第九のCD。


第一楽章、300小節で、数々の巨匠が手練手管を施すのがだ、アーベントロートは後半でfにしただけの淡白な表現だった。


第二楽章、540小節から異常な程テンポを速めた。


第四楽章、実は1951年盤では楽譜通りなのだが、1953年ではワインガルトナーの指示通りの金管の加筆に転じているのが不思議である。
アーベントロートはワインガルトナーの金管の加筆を実行している。どんな心境の変化があったのだろう。


9小節の前で間を置いた。74-75小節の8分音符からアーベントロートは極度のテヌートで弾かせている。89-90でも同様にしている。アクセントにしている指揮者もいるが、テヌートで一層テンポが落ちるのがいい。cresc.でかならずfにしているのが面白い。


203-207小節がアーベントロートの指揮の白眉なのだろう。
203小節のpoco ritenente から、アーベントロートは少しテンポを落とし、205小節のpoco adagio はリテヌートが掛けられて最大限のテンポの落ち込みをして、cresc.の所でテンポが加速されるのである。さすが巨匠と呼ばれる妙味があった。



見ものはテノール独唱で、ad lib.と書いている箇所である。なるほどベートーベンはアドリブを容認しているわけだ。
アドリブだから何をしてもいいわけだ。8分音符から2分音符にアーベントロートはスラーを掛けて歌わせている。とても良い。今時では絶対に歌われない歌唱である。


もっと凄いのが続く、Freudeである。
アーベントロートは240小節の後半のdeは歌わせない。Freuしか聞こえない。そこでFrei
にも聞こえ、アーベントロートの東ドイツに対する自由抑圧の密かな抵抗ではないか。


アーベントロートは9種の第九の録音を残している。そして1951・10・29の録音も残していて、これはゲルハルト・ボッセがコンサートマスターをしていたもう一つの録音であるようだ。