続パスカルの葦笛のブログ

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フーベルマン・スタインバーグ指揮ベルリン国立歌劇場管弦楽団のチャイコフスキー・バイオリン協奏曲

十九世紀末の退廃趣味満点といえばフーベルマン・レーケンパ・スペルピアといった三羽ガラスであろう。歌人の塚本邦雄はコンチータ・スペルピア(1895-1936)に熱をあげて熱狂したことはつとに有名だ。カルメンのスペルピアか、スペルピアのカルメンかと呼ばれたコロラトゥラの名唱であった。その点ではレーケンパ(1894-1949)のマーラー『亡き子をしのぶ歌』も語り草だった。


フーベルマン(1882-1947)は後出にハイフッツが出ていささか価値を失ったが、それでも伝説的な雰囲気は漂わせている。技術ではハイフッツに劣るとしても、灰汁の強さでは優っている。チャイコフスキーのバイオリン協奏曲の演奏は打って付けであろう。


第一楽章。
28,30小節のバイオリン・ソロのど強い解釈こそフーベルマンの真骨頂であろう。
8分音符2分音符にたっぷりアクセントを付け、8分休符でたっぷり間を開ける。フーベルマンは指揮者のスタインバーグに序奏で同様に演奏させている。この灰汁の強い解釈で聴衆を唸らせるのである。


かと思うと、Piu mossoで、極端にテンポを加速して、演奏は只平仄を合わせるだけになっているが、これも超絶的な技巧が発揮された。
一糸乱れぬ演奏とはよく言ったものだが、オーケストラもソロもアッチェレランドでそれをやっている。ここが聞き所でもある。


第三楽章。
冒頭からわずか52小節進んだだけで、243小節に飛んでコーダになだれ込む。
小カデンツで技巧を披露してしているが、もう終わりというわけである。


第一楽章が山なのかな。それを披露したらもう終わってもいいのが十九世紀的なのかもしれない。