続パスカルの葦笛のブログ

FMラジオやテレビやCDのクラシック音楽の放送批評に特化したブログです。

小林秀雄『音楽談義』昭和42年

対談の相手は五味康祐、クラシック音楽では最も信頼した人物である。骨董の青山二郎に匹敵する好敵手だ。正直に言えば骨董の青山二郎にクラシック音楽の五味康祐は、落ちるだろう。だが何かオーディオとレコードでは絶対的信頼を置いていた。五味康祐に信用を置く何かがある。実は五味康祐は片耳は聞こえなくて、終始イヤホーンを使用した聴覚障害者なのだが、そんな彼が小林秀雄のクラシック音楽の指南役にされたこと自体が可笑しいのだが、肝胆相照らす仲になった。


本当はスポーツカーのスピードの出し過ぎで人を死なせ、道理だと交通刑務所に収監されるところだが、小林秀雄の嘆願書が功を奏した。何故そこまで便宜を図るのか。法の下の平等からそぐわないのだが、敢えて便宜供与した。


ここでは小林秀雄はクラシック音楽の無類の愛好家の代表で、日頃の音楽愛好家の鍛錬ぶりを、五味康祐は忌憚なく引き出している。そういう意味では余人には代えがたい。


「ヴィートはブラームスのヴァイオリン協奏曲をやっている。ヴィートという人が好きなんだ。もう一人女がいる。エリカ・モリーニもいいですよ。レコード評論家はバカにしているが、そんなことはない。ヴァイオリニストは女が一番いいよ。モリーニのタルティーニは絶品ですよ。テレビをひねると、ヴィートがメンデルスゾーンをやっている。新潮社にすぐ買って来いといったんだがね、ない。」


昭和42年の録音で、ラジオ録音か、雑誌対談の録音らしい。鎌倉の華正楼という場所らしいが、外で子供が遊んでいるらしく騒がしい。


ヴィートは、ジョコンダ・デ・ヴィート(1907-1994)イタリアの女流ヴァイオリニストである。むしろフルトベングラー指揮の相手で有名である。そのレコードは発売されていない時期だ。小林秀雄がテレビでヴィートのメンデルスゾーンの協奏曲を見たという。すわ指揮者はそのフルトベングラーかよ、と驚く次第である。フルトベングラーとヴィートでメンデルスゾーンの演奏が、映像で残っているか。音源は残っているのだから、映像が残っている可能性はあるのだろう。


調べたら、昭和39年(1964)春、NHKで放映したのは間違いないらしい。メンデルスゾーン作曲ヴァイオリン協奏曲独奏ジョコンダ・デ・ヴィート、ケンペ指揮バンベルク交響楽団1961年録音(BBC)が音源である。ヴィートは1962年に突然引退した。


エリカ・モリーニ(1904-1995)はモノラル録音のウエストミンスターで録音活動は終わったが、1976年まで演奏活動は活発であった。ジョージ・セルはモリーニを高く評価し最晩年までクリーブランド管弦楽団の演奏会に招待した。タワレコ限定で今も『悪魔のトリル~タルティーニ・ヴァイオリン作品集』があり、「モリーニのタルティーニは絶品ですよ」(小林秀雄)が聞ける。


とりとめもない雑談は残らないのだが、こうして読めるのが有難い。



付記。
テレビで岸田首相狙撃事件をやっているが、何故犯人木村隆二の捕獲現場をテレビ・アングルで放映するのかの意図が理解出来ない。顔丸出し、は警察は最初から意図していた。あんな混乱現場で冷静沈着なポーズの付け方は疑わしい。実行犯と真犯人の二股に分かれるか。


さて、作家某は川西市住民で、自宅の一本線延長上に犯人の家があるらしい。間に人気のうどん屋があって、あの辺の住民はみんなあのうどん屋に行くので、某はそのうどん屋で犯人木村隆二と会っていたはずだと言う。


資産十億といわれ不動産賃貸でも高収入がありベンツを乗り回す百万部作家某、百万部にこだわり執筆に明け暮れる毎日、疲労困憊の姿でユーチューバーの顔を続ける。そこまでして稼いでいるのが痛々しい。(でも番組は面白いです。)他方トラック運転手で株投資する父と化粧品販売員をする母の間で育った犯人木村隆二がいる。一本線の道路の東西でこんな光と影が差している。こんな日本でいいのか考えさせる事件です。