続パスカルの葦笛のブログ

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アルノンクール指揮ウィーン・コンツェルト・ムジクスのベートーベン5番『運命』

アルノンクールの『運命』の演奏、古楽器奏法の演奏としては貧相過ぎたが、第四楽章では面目が躍進された。ちょっと全集の完成がとん挫した所以が分からないではない。是が非でも完成させたい執念があったら、完成出来たのであろうが、そういう緊張感がないのである。


とはいえ第四楽章は傑作である。58小節のトロンボ-ンは楽譜はfだがアルノンクールはfffに強調して演奏させているのだ。
なるほど効果は尋常ではない。だがこれは古楽奏法なるが故のものではない。アルノンクールの個性のなせる業であって、ロマン主義奏法である。


80小節のトロンボーンも凄い。
その効果に感嘆するばかりなのだが、これが古楽奏法かという疑問もある。


さて、最後のコーダの個性も凄かった。
アルノンクールは、433,435,437,441,443小節の2分休符にフェルマータを掛けて、相当長い沈黙を与えている。ユニークな解釈だ。そしてこれは古楽奏法とは無縁である。


アルノンクールは古楽奏法の指揮者としてはその個性に負けて、個性・灰汁が強い芸術家として優ったのであろう。それは彼の真骨頂でもあるのだろう。