続パスカルの葦笛のブログ

FMラジオやテレビやCDのクラシック音楽の放送批評に特化したブログです。

ブリュッヘン指揮18世紀オーケストラのモーツアルト41番

ブリュッヘンの1986年のライブ録音。古楽器奏法の最初期の録音である。


第一楽章。
94小節の楽譜はfで印刷sされているが、ブリュッヘンは何とあえてppに演奏している。
 これはかなり衝撃的な演奏だったらしく、ルネ・ヤコブ指揮フライブルグバロック・オーケストラもppにしている。ブリュッヘンの影響であろう。


234小節のバイオリンをfの文脈で、ppに弱めてえんそうしているのも印象的であった。


第二楽章。
29小節で、一般的にはフルートが浮上した演奏をするのだが、ブリュッヘンはホルンを強調させた演奏にしている。


32小節では繰り返されるのだが、ホルンの強調はなく一般的なフルートの浮上にさせている。これは単なる気まぐれなのか、どうか。


第三楽章。
メヌエット楽章だが、最近の古楽器奏法の流行といおうか、研究成果は、楽譜にない音符の装飾音符の演奏ということになる。
84-85小節のフルートで、
ルネ・ヤコブ指揮フライブルグ・バロック・オーケストラ
ピション指揮フライブルグ・バロック・オーケストラ、
アンスネス指揮スウエーデン放送交響楽団、
は、装飾音符付加の演奏をしている。
古楽奏法の先駆者ブリュッヘンは装飾音符付加には全く無関心である。(そういう研究が現れてなかったのだ。)


残酷な話だが、古楽器奏法の研究は日進月歩の速さで進化しているので、1986年当時は最先頭にいたブリュッヘンが後手になって古楽器奏法の現在からは遅れてしまった。実に残酷な話だ。どんな人にも絶賛しなかった吉田秀和から、天才的な人と言わしめた演奏だが、古くなった。


中国研究家の遠藤誉女史は元来は理論物理の研究者で、5年英米の最新の研究論文を読むことを怠っていると、現在の研究に追いつけないと言う。もう理論物理学の研究者に戻れない。それ以上に中国分析に魅了された。