続パスカルの葦笛のブログ

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山崎行太郎の柄谷行人論(『力と交換様式』)

哲学のノーベル賞バーグルエン賞を受賞した柄谷行人の『力と交換様式』だが、今一番簡単に解説しているのが山崎行太郎である。『合評会・柄谷行人力と交換様式』(23・2・18)があり、『柄谷行人を解く』(23・5・11)もいいだろう。分かり易く解説しているのは山崎行太郎以外にいない。


山崎は『小林秀雄とベルグソン』でデビューした時江藤淳と柄谷行人から評価され、それ以来柄谷フアンを自認してきた。柄谷も小林に影響され、マルクスの読み方は小林秀雄の読み方に学んだ。と、山崎は分析する。


パスカルに「考える葦」という言葉があって、小林は「脆弱な葦だから哀れに生きよ」と解釈した。正統的な解釈は、取るに足りない葦だが考えることで世界の創造主にもなれる。


こういう解釈でマルクスを読んだのが小林秀雄と柄谷行人であった。そうすると、賞の選考委員でもあった中国人の王揮清華大学教授は、従来欧米人には間違った解釈だといわれたことが、中国人の自分には柄谷のマルクス解釈には素直に飲み込める。韓国人や台湾人も柄谷のように解釈できる。それはあながち間違いではないのではないか。で、新しいマルクスの読み方を提示した。そういう横断的な選択肢を提示したことが素晴らしい。(ということで柄谷は中国・韓国・台湾・アメリカで人気が有り受け入れられている、と山崎は絶賛する。)


賞の対象は『世界史の構造』で、世界史はA原始社会、B封建社会、C近代・資本主義社会と進展し、Dポストモダン社会に到達する。資本主義はアソシェーション論で克服される。


『力と交換様式』は、マルクスが生産様式で世界を把握したが、マルクス主義の上部構造と下部構造の考えでは文化は経済関係の反映に過ぎなかった。しかし上部構造には独自の強力な力があって、「人間はお金では動かせない」ものがある。


ウエバーは労働者が信仰で質素勤勉貯金をして資本主義を発展させたし、フロイトは人間はリビド(性欲)・無意識に支配されるし、デュルケイムは人間が集団になって社会を動かす。サッカーを見たあとに街を破壊するのはどうしてか。淋しい歌を聞いて自殺するのは何故か。経済の奴隷ではない面が多々ある。マルクスでは解答が出ない。


マルクスは生産様式で世界を説明して失敗した。柄谷は交換様式で説明する。利用した理論はモースの『贈与論』であった。送る与えるの交換様式では、金の亡者の人間が文化人になる。人間が洗練される。


わずかな海産物の乾物を持って卑弥呼の使者が魏王を訪問する。返礼に金印や青銅鏡を返礼する。どうしても経済的平均が釣り合わない。(等価値・等価交換が否定。)遠国の使者を大歓迎する。これが互酬性である。相互に贈物・お返しをして関係を維持する。


柄谷は来るべき社会Dは互酬性の社会だろうと予言する。脱経済の世界である。クローバル経済を否定しているのかも知れない。


ここまで柄谷の『力と交換様式』を解読出来たのは山崎行太郎只一人だろう。