続パスカルの葦笛のブログ

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ノリントン指揮シュツットガルト放送響のベートーベン6番

ノリントンは古楽派では唯一のアゴギーク(伸縮)を使用する指揮者だ。そういう意味ではベートーベンの交響曲6番は古楽奏法とアゴギークが絶妙な統合を見せた傑作であった。


第一楽章。
古楽奏法とアゴギークが統合された名演であった。それは冒頭ですぐ見せた。速いテンポで開始されたが、ノリントンは伝統的な演奏のテンポの落ち込みを厭わない。
ノリントンが選択したのはフルトベングラーがローマ放送管弦楽団に客演した時の型だった。第一バイオリンに引き継がれる旋律では、伝統的なアーテイキュレーションであった。


ノリントンの古楽奏法に違和感がないのはそういうところにあるのかも知れない。


66-67小節の第一バイオリンでも、テンポが落とされ間をいれてアルコにもちこまれる。


280小節のビオラでラレンタンドされ、テンポが落ちる。345小節の第一バイオリンでもテンポが落とされ、古楽奏法の違和感がないのが、ノリントンの骨頂である。


427-428小節のフルートでテンポが見る見るうちに落とされ、435小節までテンポが落ちてゆくのは巨匠指揮者の手練手管とした言いようのない巧みさで、逆に436小節の弦からアッチェレラントで速度が速まる。
ここの演奏は第一級の指揮者の演奏である。


第二楽章。
忘れてならないのが、第二楽章の31小節のフルートで、ノリントンは5泊目に何と装飾音符で演奏させている。
ノリントンとしては、ただフルートに装飾音符で演奏させたかっただけかも知れない。


しかし他方当時の演奏法では、演奏家は随時に装飾音符を付けて勝手に演奏してもかまわないという自由があったのだと言いたいのだろう。そういう蘊蓄があるわけだ。


これはノリントンの真骨頂なのだ。


この人は当初からワーグナーのようなロマン派も射程に入れていて、古楽奏法を18世紀に限定させない考えがあった。融通無碍な古楽器派だった。