続パスカルの葦笛のブログ

FMラジオやテレビやCDのクラシック音楽の放送批評に特化したブログです。

マタチッチ指揮NHK交響楽団のブルックナー8番

マタチッチはNHK交響楽団では1975年と1984年と2回とも8番はノバーク版を使用していたようだ。


第四楽章。
135-158小節の間、2回ともテンポを揺らしていたのが白眉だった。
マタチッチは、I番号の弦の開始(左頁下)からアッチェレランド(テンポを加速し始め)、156小節の右頁上段後半からラレンタンド(テンポを落とす)に転じ、右頁下の150小節で一層テンポを落とし、151小節から又アッチェレラント(加速)に転じた。そして下頁最後の158小節でテンポを落とした。


まさに変幻自在の極みだ。


さて、231小節の第一バイオリンの2分音符のヴィブラートを効かした極上の音色は出色であった。


462小節のritard記号で、マタチッチは定石通りテンポを落とし、463小節のff記号の効果を引き出した。


474-480小節で、マタチッチとドホナーニ指揮NDRエルプ・フィルの演奏が名演であった。
トランペットで、同じ音型が3回反復するが、マタチッチとドホナーニは、3回目の音型にテンポを落として演奏させた。1:1:2の割合になろうか。


600小節辺でマタチッチはテンポ・アゴギークを見せている。


マタチッチはなかなかの楽譜に一家言のある人なのだが、8番ではノバーク版を使用しているようだ。この放送の最初で『序曲』が演奏されたが、あれは4番のレコードを2枚組でEMIから発売する時に付録で録音したものなのだが、本来は4番のレコードでブルックナー指揮者として認められるはずであった。(レッグもそれを認めて贅沢な要求に応じたわけだ。大成功するわけだった。)その公算が外れて、レハールのオペレッタのスペシャリストとして認められることになってしまった。ブルックナーの4番では、マタチッチはハース版を使用している。ハース版は4番が一番出来が悪かった。ハース版を使用してブルックナー指揮者として認められることに失敗した。


朝比奈千足がハース版4番の演奏をやることになって、父親の朝比奈隆が「なんであんなものをやるのだ」といったという。この人もハース版の信奉者なのだったが、4番の出来の悪さを知っていた。このエピソードには落ちがあって、聞いた後「なるほどな」と言ったとか。しかし4番をハース版でやることはなかった。


NHKFMでマタチッチのブルックナーの海外での演奏が数曲が放送されたことがあるのだが、噂によるとエアチェックの音源ではなく放送用テープの音源使用でCDとして売られたことがある。(海賊盤)そのシリーズにはどういう理由か、4番(ウィーン交響楽団)だけ発売されなかった。宇野功芳は4番の演奏を聞いていたが、評価しなかった。その影響があって、発売されなかったのではないかと考えるのである。確か3番・4番・5番・7番・9番がFMで放送された。マタチッチの4番は、長らくフィルハーモニア盤は廃盤で入手出来なかった。一番欲しい録音が発売されなかったのである。そういう点でも宇野功芳の関係者が売ったのではないか。


マタチッチ本人としてはハース版4番の演奏は自信があったのだろう。しかし楽譜に改訂版以上に欠陥があって、好まれなかった。マタチッチはハース版4番に固執した結果、マタチッチは4番の演奏が苦手・不得意という評価になった。ハース版4番に固執しなかったら、ノバーク版4番で演奏していたら、4番に名演を示しえたのだろう。残念でならない。