続パスカルの葦笛のブログ

FMラジオやテレビやCDのクラシック音楽の放送批評に特化したブログです。

『小津安二郎は生きている』Eテレ平山周吉出演

平山周吉の小津安二郎論が注目されて、要点を自ら出演して解説していた。


(1)山中貞雄の『丹下左膳余話百万両の壺』の壺は小津安二郎の映画にも扱われていて、    
   二人の友情が壺で表象されている。


(2)小津安二郎の『東京物語』では、原節子と笠智衆とが戦没者としての山中貞雄が追悼 
   されている。


山中貞雄は最初に原節子を見出して『河内山宗俊』に出演させ、山中と小津は監督同士で友情を結んだ。同じく徴兵され従軍したが、山中は戦死し小津は生還した。行き場のない原節子の面倒を見ることになった小津安二郎であった。そして大女優に成長する。


山中貞雄と原節子とは多分恋愛関係があったのだろう。後をよろしくと、遺言されたか。『東京物語』の原節子は笠智衆の息子と結婚していて、その息子は兵隊にとられ出兵して戦死し、原節子は戦争未亡人となっている。とすると戦死者は山中貞雄ということになる。そして夫婦だったわけだ。


『東京物語』では笠智衆はもう戦死した息子のことは忘れ、再婚しなさいと説得する。尾道で生活している老夫婦の一番の東京旅行の目的は、戦死した息子の嫁に息子のことは忘れて再婚して自分の新しい道を歩んでくれということを言うことだった。


高橋治『絢爛たる影絵』では、若い独り身の原節子の未亡人は性的な悶えに苦しんでいる場面を小津はあえて表現しているという。未亡人として生きる自己犠牲から解放させてやる。言語外に映像でそれが描かれている。


それはまた小津安二郎の婉曲な原節子へのプロポーズでもあった。亡き盟友山中貞雄のことは忘れて「僕と結婚してください」という小津安二郎のプロポーズでもあった。


生涯独身を通した原節子は『東京物語』で小津安二郎の婉曲なプロポーズを蹴って、生涯山中貞雄を夫に決めて独身を通したとも考えられるわけである。


平山周吉の山中貞雄と小津安二郎と原節子の三人の詳細な交友関係を炙り出した結果、そんな物語が読めるのであった。