謎が解けたメンゲルベルクのベートーベン交響曲8番
メンゲルベルクのベートーベン交響曲全集の8番の大胆な演奏に気づかなかった。その謎が解けました。戦前に8番の名演とされたSPレーコードが1938年11月9日録音で、ユーチューブで聞ける。実際に聞いて見たら、第一楽章103小節ダ・カーポは省略され楽譜通りの演奏であった。これを聞いていたわけだ。
メンゲルベルクのベートーベン交響曲8番の演奏には、1938年と1940年の2種があるわけだ。(正確にはターラ盤1943・5・13の3種。)そして古いから19世紀に近くて、19世紀特有の演奏法の形跡を残しているとも言えないということだ。1940年の方が古色蒼然とした古臭い解釈になっている。むしろメンベルベルクの芸術観の進化・深化なのだろう。
これはフルトベングラーにも言えて、メンゲルベルクも、よほど1920年代の方かすっきり明快であっさりした演奏になっている。これは実に簡単で、表現出来る技術を未だ獲得出来ていなかった。年齢が若く未熟だったということになる。
タワー・レコードのインターネット版の解説では、全集の3番は4月のベートーベン・チクルスでは第一楽章の録音に失敗して、同年11月11日に再録音したものが使用されているとなっているが、リフレットは以前同様のスタジオ録音盤となっている。実際に聞いて見ると、スタジオ録音盤のようだ。このスタジオ録音が11月11日ということ。
ちなみにベートーベン・チクルスの録音失敗盤はターラ盤で2-4楽章が収録されている。(ベートーベン交響曲集未発表録音集)
そこでメンゲルベルクの1940年ベートーベン・チクルスのプログラムを再現してみたい。
4月14日 4月18日 4月21日 4月25日 5月2日
1番(全集) 8番(全集) 2番(全集) 4番(全集) 9番(全集)
3番(ターラ盤)5番(全集) 6番(全集) 7番(全集)
バイオリン協奏曲7番(ターラ盤)
(ツィンマーマン)
4月14日の3番は残欠がターラ盤、11月11日の再録音がスタジオ録音(全集)。
ターラ盤のその他の録音は、2番が1943・3・21と1936・5・14。3番は1940・4・14と1940・4・21と1942・3・5。6番は1938・5・22。7番は1936・5・21。8番は1943・5・13。