続パスカルの葦笛のブログ

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追悼大町陽一郎指揮東京フィルのベト8番、プフイツナーを彷彿とした名演

ここで最高傑作はと問われれば、ブラームスのハンガリー舞曲5番の演奏ということになる。それはユーチューブで東大フォイヤーヴェルク管弦楽団の演奏で今だに見える。(2007年録音)何とNHK交響楽団のチェロの名手木越洋が弾いている。どういう関係なのだろう。(ちなみにチョンマゲおじさんが日本のチェロの最高峰木越洋だ。)これも見ものだろう。


この演奏はウィーン・フィルの音色の秘密は独特の奏法があることを発見し、大町陽一郎が再現した手法に準じた演奏だという。確か「題名のない音楽会」で披露したことがある。実に詳細なテンポのアゴギークや弓のアップ・ボウを極端に弾くといったものである。半ば苦笑もので、それを大真面目に演奏しているのがいい。この演奏を聞いたら、他の5番は生ぬるさを感じるだろう。一聴に値する。


それで追悼としたら、お粗末であろう。


ベートーベン交響曲8番大町陽一郎指揮東京フィルハーモニーの演奏を取り上げたい。演奏年代は2000年代で、最晩年の演奏だ。記録欠である。


第一楽章、331-332小節を、ドイツの作曲家指揮者のプフィツナーがリタルランドを掛けているのだが、大町陽一郎の最晩年の演奏はそれを踏襲していた。
右端331小節の3つの8分音符が次第にテンポが落ちてゆき332小節でア・テンポ(元に戻る)をしている。


この演奏に接して驚かされた。大町陽一郎の最晩年の円熟の境地だと思った。


調べて見ると、プフィツナー指揮ベルリン・フィル1933年の演奏がそうなのだ。70年も隔てて東京でこんな演奏がされていたと思うと貴重な体験をした思いだ。


そして気になって調べて見ると、クナッパーツブッシュの2種の演奏がそうしているのを発見した。


さらに驚くべきは豊田耕児指揮群馬交響楽団の演奏だ。331小節後半2つの8分音符をリテヌート(均等にテンポを落とす)をして、332小節でア・テンポしている。先例のプフィッナーやクナッパーツブッシュの解釈を消化して、独自の解釈を出していることだ。


それはともかくとして、この箇所はドイツの伝統的な解釈がなされる所であったわけだ。指揮者大町陽一郎の長い人生が到達した円熟の境地と見たい。