続パスカルの葦笛のブログ

FMラジオやテレビやCDのクラシック音楽の放送批評に特化したブログです。

音楽が破綻する寸前の限りない魅力の1970年ライブのクレンペラー・モーツアルト40番

誰であったか京都の一流料亭でフグの肝を食べて死んだ歌舞伎俳優がいた。それほどフグの肝は旨いらしい。もちろん一流の料理人の調理する料理だ。安心このうえなかろう。


林房雄が鎌倉の海で、自分の釣ったフグを三島由紀夫に料理したら、震えあがって一口も食べなかっいたという。林房雄は自分で食べていたのだろう。キノコも土地によって食べれたり、食べれなかったりする。あれは何なのか。不思議である。


今ユーチューブで1970年のクレンペラー・ライブが上げられている。シューベルトの9番(8番)がもう消えている。(私はこれは凡演、愚演だと思う。異化作用をしていたら名演になっていたはず。)これも早々消える運命なのだろう。1970年のモーツアルト・プログラムでピアノ協奏曲25番(ブレンデル)と交響曲40番だ。イギリスの聴衆はクレンペラーのフグ毒を楽しがっているようだ。


モーツアルトの交響曲40番の演奏、まったりとしたテンポで開始され、このままゆけば演奏が破綻するようでいて、最後まであのテンポが維持されてという技がクレンペラーの最大の魅力だ。これもブレヒトの『異化作用』が適用された魅力このうえない演奏だ。誰がこんな指揮を出来るのか。


そういう指揮者は他にいました。フリッチャイ指揮ベルリン放送交響楽団と井上道義指揮ザルツブルグ・モーツアルテウム管弦楽団の演奏だ。若い頃の井上道義は天才的だったなと、それを彷彿する演奏だった。その演奏はすぐフリッチャイのパクリだと判明したが、誰をパクルかがそもそも才能の根拠になる。芸術は本歌と本歌取りの反復でしかない。


まあ2~3週間でクレンペラーの貴重な演奏はユーチューブから消えるのだから、この機会に聞いてもらいたいものだ。