続パスカルの葦笛のブログ

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意外にオーソドックスなレイボヴィッツ指揮ロイヤル・フィルのベートーベン2番

ベートーベンのメトロノーム指定に即した速いテンポという神話は1960年代に作られた神話で、意外に聞き易い演奏である。リーダース・ダイジェスト版のベートーベン交響曲全集であることを初めて知った。セル指揮クリーブランド管弦楽団の演奏は同様の普及版なのだとグールドが揶揄している。その真意は芸術ではなく大衆迎合の演奏だという訳である。


そう言えば平凡社百科事典の普及で、文学・美術・音楽全集が家庭に普及した。近衛の演奏は出版社の音楽全集の物で、普及版ながら近衛の晩年の芸術を記録するものになった。一般大衆の普及を目的にしながら、芸術面の成果があった。


ルネ・レイボヴィッツ(1913-1972)のベートーベン交響曲全集だが、一般大衆の普及を目的にしながら、それに終わらなかったようだ。それが今回の2番の演奏だった。意外なほどまともな演奏で、オーソドックスな演奏だったと言える。


第一楽章。
195小節のバイオリンで、cresc.指定が分かり過ぎる位明瞭に聞こえるのがいい。


第二楽章。
46小節、3つの8分音符の所で、ワインガルトナーとマタチッチ指揮NHK交響楽団が、
リテヌートを掛けてテンポを落としているのだが、ルネ・レイヴォヴィッツが踏襲している。意外にオーソドックスな演奏をしているという所以である。


242小節の第一バイオリンで、この三人はcresc.の所でfにしている。


第三楽章。
22小節からワインガルトナー指揮ロンドン交響楽団は、アッチェレランドを掛けてテンポを速めているが、
レイボヴィッツもそうしている。
ここはメンゲルベルク指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団もそうしている。


第四楽章。
401-403小節の金管をマタチッチがfで強調しているが、レイボヴィッツもそうしている。
現代作曲家ということだが、伝統的演奏も目配せしているわけである。
 コーダの437-439の金管をこの二人は奇しくも同様にfで強調している。


ルネ・レイヴォヴィッツのベートーベンは従来速い演奏だけが取り柄の演奏のように評価されていたが、意外なほどオーソドックスな演奏だったというのが感想である。