続パスカルの葦笛のブログ

FMラジオやテレビやCDのクラシック音楽の放送批評に特化したブログです。

木山捷平『茶の木・去年今年』短編小説の極北

      昔懐かしい旺文社文庫の木山捷平の『茶の木・去年今年』である。       こんな本があるというのが旺文社文庫の面目であった。時代が経つ       にしたがって名著の宝庫になる。 『旺文社文庫』の古書値段が高騰していて困ってしまう。当時は名著を安価の値段で普及せるという眼目であった。高邁な理念が生きていた時代だった。安い値段で名著を学生に普及させる。学生が本を読まなくなって早々旺文社…

AIにイスラエル軍のガザ攻撃を予測させる

案の定圧倒的な成功で終わる、と予測する。イーロン・マスクではないが日本が消滅するように、ガザ地区が消滅し、イスラエルも消滅すると出た。それでAIを利用して無駄な戦争を中止としたら凄いね。 10月6日(金)の金相場が異常な高騰を見せたが、ハマスのイスラエル攻撃の結果だったことが後知恵で判明した。これを予測出来なかったイスラエルのスパイ力が疑われている。寺島実郎はイラン革命の兆候は半年前に出ているの…

オーバードーズ文学の先駆者尾崎翠とその脱出記

   群ようこ『尾崎翠』伝、残念ながらオーバードーズの問題意識がなく、    単なる文学表現としか第七官界を見ていない。 尾崎翠(1896-1971)は常用薬物で幻覚症状におそわれる。幻覚症状と頭痛と耳鳴りに悩まされる。その中で暗中模索で探し求めたのが幻想的な事物の去来であった。それを熱心に書き集めた、手掛かりの無い事物の捜し求めた世界が、第七官界という世界(オーバードーズ)であった。 尾崎翠は…

ズッカーマン指揮東京フィルハーモニーのベートーベン7番

音楽家が指揮者に転向する話はよくあるが、さりとてプロの指揮者に転向するでもなく、というのはあまり類例がない。前にオイストラッフがあるくらいだ。ズッカーマンもさりとてプロの指揮者に転向する意欲はないようだ。 昨今指揮科を卒業してそのまま指揮者になり、オーケストラの中でバイオリン奏者の立場からすると、いかにも横暴な要求を掲げる指揮者に異議申し立てしたい気になる。そういう立ち位置の指揮者がズッカーマン…

今年最大の名演マリン・オルソップ指揮スウエーデン放送響のショスタコ5番

マリン・オルソップ指揮スウエーデン放送響のショスタコーヴィッチ交響曲5番の演奏である。(2023・2・3)まだ今年の演奏である。今年の最大の名演であろう。 逆境を跳ね除けた交響曲(通説)、あるいはホーネックはショスタコーヴィッチは5番で新しい手法を発見したのだという。音楽を二重構造にして、表面上はスターリンを喜ばしながら下部構造に皮肉なメッセージを込めたのだという。ムラヴィンスキーのようにスタリ…

最後に大爆発、新境地を開いたトン・コープマンの39番

この人ほど過去の自分の演奏に囚われない人はいないようだ。新しい様式を築いたトリオの装飾音符の演奏に眼もくれず、前進して新境地を、ということは新しいモーツアルトの演奏を追求してやまないのだ。 そして交響曲の最後の土壇場で大爆発して演奏を終えた。これは多分古楽器奏法とは関係なく、トン・コープマンの個人的趣味なのだろうが、実に面白い限りだ。 演奏は、トン・コープマン指揮NHK交響楽団のモーツアルト交響…

指揮者ワルベルク年譜(2)

9月29日はワルベルク(1923-2004)の命日です。付け加えれば、生誕百年記念年です。ワルベルク年譜(2)を掲載します。 第一期黄金時代を迎えたワルクベルクですが、超一流指揮者はここで世界的な名門オーケストラのポストに就任します。が、ウィーン・フィルは将来性なしと厳しい査定をします。恩師クルト・ヴェスはフルトヴェングラーの後継者と認定されながらも、選んだのはカラヤンだった。そのカラヤンが選ん…

指揮者ワルベルク年譜(3)

9月29日はワルベルク(1923-2004)の命日です。付け加えるに、今年は生誕百年記念年です。ワルベルク年譜の完結編をお送りします。 1986年 63歳 ハーグ・フィルで、レスピーギの『ローマの泉』、ドボルザークのヴ             ァイオリン協奏曲(ジノ・ヴィコフ)を録音する。 1988年 65歳 9回目の来日。2月12・13日、ワルベルクは初めてブルックナー            …

バレンボイム指揮ベルリン・フィルのブラームス2番

バレンボイム指揮ベルリン・フィルのブラームス2番(2023・1・6)の演奏。 バレンボイムはその月末に健康が優れず事実上の引退表明をした。ところがその後体調が好転して仕残りの仕事をする、その一つが今秋にベルリン国立歌劇場管弦楽団でブラームスの交響曲の全曲演奏会を行う予定であるらしい。 これはどうもベルリン・フィルとの演奏に不満が生じて、手兵のベルリン国立歌劇場管弦楽団で満足した演奏を披露したいと…

メディア王マードック引退、テレビ朝日をなぜ買収出来なかったか

オーストラリアの小さな新聞社を父から継承して、世界中のメディアを買収してメディア王になったマードック。寄る年波に勝てないで、事業を息子に継承して、引退を決意した。 さて、マードックは日本のメディアのテレビ朝日を買収しようとした。これは単なる資本主義の企業買収の一齣に過ぎない事件だったが、ここに日本の根深い病理が横たわっていた。強い者が弱い者に勝利する。それは正当な論理だ。八百長の論理では、そうは…

世田谷左翼の正体

高級住宅地の住民が意外に政治的には革新派で、左翼行動をとる。選挙では保守政権に反対する投票行動をする。分析すると保守政党を支援する一流企業の正社員で、丸の内や六本木にある高層ビルに本社があるサラリーマンである。 保守論壇では、一見すると正反する行動に理解ができかねている。彼らは資本主義社会を肯定して、明白に資本主義社会の果実を一番大きく獲得して利益を享受しておきながら、何故政治行動となると、それ…

尾高忠明指揮大阪フィルハーモニーのブルックナー3番

尾高忠明指揮大阪フィルハーモニー(2020・1・16)。 「2018年の音楽監督就任以来、数々・・・精緻な表現と豪放な響きを併せ持つ・・・尾高ですが、『第3番』は版の選択を決めかね、演奏する機会に恵まれませんでした。しかし「朝比奈隆ゆかりの大阪フィルに来たからに、ここで3番を始めるべき」と2020年1月の3公演に臨むことを決意します。オーケストラにとっても、2002年の朝比奈追悼公演以来となる『…

初期で絶頂期のワルベルクの人生(『年譜』1)

ワルベルクはどんな人から影響を受けたか、どんな先生に教えを受けたかも知らないし、事実決定的な影響はなかったのだろう。平凡に生まれ育ち、その行く末は平凡で終わる運命だったのだろう。こんな凡人が運よく人生の門出で人生の絶頂期を迎えた不思議な体験をしたのだった。 1923年      3月29日、ウエストファレン州ハムに生まれる。親がどんな人か                   も伝わっていない。 …

ブルックナー指揮者ワルベルクの足跡

 ワルベルク指揮デュースブルグ・フィルのブルックナー5番(2004・2・21~22)。  2004年9月29日に没したワルベルクの音楽的遺言となった。 ワルベルク(1923-2004)は隠れたブルックナー指揮者でもあった。長い生涯の始めから終わりまで一貫してそうだった。後家の一徹という言葉があって、夫を亡くしても再婚しない未亡人は、夫婦仲が良い、フタと器(夫と妻は元来他人)とは別物だが一体と見な…

生誕百年ワルベルク指揮NHK交響楽団のブラームス3番

ハインツ・ワルベルク(1923-2004)は今年生誕百年の記念年である。忘れる者は日々疎しというが、ドイツでも日本でもほぼ忘れかけているといっていいだろう。 調べてみたら、没年の2004年2月28日にN響を指揮し、9月29日に81歳で没した。1966年に初来日したプログラムと同じものを指揮したという。2001年の来日が事実上の最後で、次の注文が来る前に死んでいるだろうと、死期をさとったワルベルク…

中森明夫大杉栄論(アナーキー・イン・ザJP)

今日は関東大震災から百年、と同時に大杉栄没後百年記念日である。 中森明夫の小説『アナーキー・イン・ザJP』は、大杉栄が登場する小説で、大杉栄没後百年(1923ー2023))ということで、5月12日(金)のNHKラジオの「高橋源一郎の飛ぶ教室」に中森明夫が招かれ、彼の大杉栄論が披露された。彼の命日9月16日は曰く因縁があって、何と高橋源一郎所縁の人が命日にしてくれたらしい。 O頭脳警察の『時代はサ…

トム・クルーズの映画『ワルキューレ』とクナ・グッドォール・飯守泰次郎

トム・クルーズの映画『ワルキューレ』は、第二次大戦中にヒトラー暗殺を計画するドイツ陸軍のエリート軍人たちの暗殺計画の実話物語である。実行者のニュタウフェンベル大佐(トム・クルーズ)はレコードを聴いて暗殺計画を練るのだが、 ワーグナー作曲『ワルキューレの騎行』 ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 と記されたSPレコードを聴くのである。ヒトラー暗殺計画はこのエピソード…

追悼・飯守泰次郎指揮仙台フルのブラームス1番空前の大爆発

2023年8月15日、飯守泰次郎が死去されたようである。82歳の長寿、ここ十年の円熟した指揮活動、4月にはブルックナー4番を指揮し、慶賀に耐えない晩年であった。 ここで思い出すのは、飯守泰次郎が仙台フィルを指揮したブラームス交響曲1番の演奏ではなかったか。(2020・2・14)数々の名演があったわけだが、一期一会たった一度しかない名演といえば、仙台フィルのこの演奏を挙げなければならない。飯守泰次…

小沢征爾指揮BPOとSKOのブルックナー7番

小沢征爾指揮で、ベルリン・フィルが1988・6・21,SKOが2003年の演奏である。確かに異なるところがあるのが面白い。 異種演奏というのはフルトヴェングラーのような巨匠なら、格別な楽しみになっているのだが、小沢征爾にもそれがあるというのは、今回初めて経験したことである。 小沢征爾のブル7番といえば、第三楽章のトランペットでダイナミクスをpp・mf・ffで振り分けて演奏させていたことに彼のオリ…

小沢征爾指揮日本フィルのベルリオーズ『幻想』1967年

若き日の小沢征爾の指揮振りを見ると、芥川賞作家羽田圭介の顔そっくりなのに驚いた。テレビ東京のローカル線各駅停車バスの旅でお馴染みの羽田圭介の顔が思い出される。小沢32歳、羽田37歳同じような年ごろだ。まだ初々しい青年といっていい小沢青年の顔。 小沢は前年(1966年)トロント交響楽団で録音し、翌年(1967年)日本フィルでベルリオーズの『幻想』を指揮した。ユーチューブで「5楽章魔女の祝日の夜の夢…