続パスカルの葦笛のブログ

FMラジオやテレビやCDのクラシック音楽の放送批評に特化したブログです。

木原誠二はアラン・ドロンを越えられるか

(すべて公開情報です。)メグレ警視で有名なパリ市警は、ブローニュの森で青年の死体を発見した。死体を調べるとユーゴスラヴィアからやって来たことが判明した。さらに調べるとユーゴの青年と有名な俳優A・Dとが関係していたことが判明した。要注意人物として更なる捜査がおこなわれた。するとホテルの部屋でAと女性がベッドで裸体姿で写真が撮られた。女性を調べるとポンピドー夫人と判明した。パリ市警は捜査を続行した。…

4年ぶり小沢征爾指揮SKOのベートーベン・エグモント序曲

2022年11月25日、長野で小沢征爾が4年ぶりに指揮をしてベートーベンのエグモント序曲が演奏された。というニュースがNBS長野放送ニュースが流された。親切にも小沢征爾公式チャンネルで2022年12月1日に全曲が公開されるという。 ベートーベン作曲エグモント序曲小沢征爾指揮斎藤記念オーケストラ(SKO)(2022・11・25) 小澤征爾公式チャンネルでは、今もエグモント序曲全曲の演奏が聞ける。 …

『思想と実生活論争』とトルストイ夫人の成長史

ここでいうトルストイ夫人とは文豪トルストイの妻のことではなく、小林秀雄とトルストイの家出で論争した正宗白鳥の妻のことである。白鳥がトルストイでその妻がトルストイ夫人かどうかは、今は不問に伏す。しかし白鳥がトルストイでツヤがトルストイ夫人という関係であることは、文脈上で繋がりがある。「女は弱し、されど妻は強し」。白鳥の妻はそういう生き方をしたし、白鳥の文学上無視出来ない影響をしている。 トルストイ…

テンシュテットの3種の『エロイカ』ライブ

テンシュテットのボストン響、ニューヨーク・フィルの『エロイカ』は伝説的な評価があり、ライブ故の聞きたくても聞けない事情がなお伝説的演奏を煽り立てた。 1)テンシュテット指揮ボストン交響楽団1977年録音。 2)テンシュテット指揮ニューヨーク・フィル1988年録音。 3)テンシュテット指揮ウィーン・フィル1982年録音。 今はユーチューブで容易に聞けるのが嬉しい。 1)ボストン響は一番録音が古いの…

西村賢太と石橋忍月

「名は体を現す」、名と実体はうまく合っている。(広辞苑) 石橋忍月は明治の文芸評論家で、筆名を忍月と号した。雲に隠れた月で、洒落た雅号だ。隠れても月で、陰陽道の片割れ他方の巨匠であるという自負である。しかし忍月には月の裏側、人の眼には見えない月という意味もあるようだ。人の眼に触れない存在なら、存在価値もないことになる。ということで、明治に活躍したことのある文芸評論家として、忘れられてしまった。忍…

山口恵以子『月下上海』と八島多江子はディヌ・リパッティを聴いたか

           山口恵以子『月下上海』(文春文庫版) 人気作家山口恵以子の『月下上海』は松本清張賞を受賞した。女主人公の八島多江子は上海に赴き洋画家の肩傍らスパイ活動をするという奇想天外な物語が魅力的である。女性離れした気宇壮大な発想が面白い。その一つに上海の家でリパッティやコルトーのレコードを聴くという場面がある。なるほど山口恵以子はクラシック音楽のマニアックな愛好者なのだということが知…

エストラーダ指揮ヨーロッパ室内管弦楽団のモーツアルト38番

エストラーダ(1977-)はフランクフルトhr交響楽団の首席指揮者をしていた時、フランスのヘルヴェッヘが客演して38番を指揮した。(2021・12・3)アンダンテで、ヘルヴェッヘはフルートに楽譜にない装飾音符を演奏させた。 所謂モーツアルトのメヌエット楽章では楽譜にない装飾音符を演奏するという最近の流行のアプローチであった。これにいたく感激したエストラーダは、自分でもぜひ38番ではヘルヴェッヘの…

ミナーシ指揮ザルツブルグ・モーツアルテウム管のモーツアルト40番

小林秀雄の『疾走するモーツアルト』を、母親から子守歌のように読み聞かされていたらしく、ト短調の疾走するメロディーから、ミナーシは演奏を開始した。日本ではモーツアルトは疾走するテンポがモーツアルト演奏なのだと言い聞かされたか。それほど速い。しかし井上道義は、同じオーケストラで遅いモーツアルトであった。 第一楽章の疾走するアレグロは、やがて40小節に至ると突然pに変化した。42小節では、暗転してリテ…

驚くべき異才ミナーシ指揮ザルツブルグ・モーツアルテウム管のモーツアルト41番

リッカルド・ミナーシ(1978-)は、イタリアの古楽器奏法の人で、39番40番を聞くと、モーツアルテウム管弦楽団が古楽器オーケストラに変貌していてしまっていた。ある面大変な失望を味わったわけである。イタリアの古楽器奏法がまた聞きずらいさがった。 41番になると、そんなミナーシが自由闊達に転じて、近代奏法に変貌した。この自由さは何んなのだろうか。結果的にミナーシが大変な才能の持ち主であることが発覚…

アルティノグリュ指揮フランクフルトhr響のマーラー4番

アルティノグリュ指揮フランクフルトhr交響楽団ソプラノ独唱はチェン・ライスで、マーラー交響曲4番の演奏である。アルティノグリュ(1975-)は2021年から首席指揮者に就任している。 第一楽章。 57小節の第一バイオリンで、アルティノグリュはテヌート記号の付いた2つの音符にポコ・リテヌート(少しテンポを落とす)でテンポを落とした。ワルター指揮フランス放送管弦楽団なども同様だ。 第三楽章。 45小…

サー・ジョン・バルビローリの肖像と1954年のブラ1番の名演

『サー・ジョン・バルビローリの肖像』がユーチューブに挙げられているが、つい見てしまった。ブルックナー7番第三楽章のリハーサルがあるのだが、見ものだった。バルビローリは数曲の録音があるが、7番は1966年12月11日のマンチェスターでの公演がCDになっているので、その年のリハーサル録音らしい。ハレ管弦楽団の演奏が気に入らず、執拗に冒頭のリズムを反復させている。ではこれぞブルックナーという独特のリズ…

マタチッチ指揮NHK交響楽団のブルックナー8番

マタチッチはNHK交響楽団では1975年と1984年と2回とも8番はノバーク版を使用していたようだ。 第四楽章。 135-158小節の間、2回ともテンポを揺らしていたのが白眉だった。 マタチッチは、I番号の弦の開始(左頁下)からアッチェレランド(テンポを加速し始め)、156小節の右頁上段後半からラレンタンド(テンポを落とす)に転じ、右頁下の150小節で一層テンポを落とし、151小節から又アッチェ…

ムソルグスキー『ボリス・ゴドノフ』と「虫けらのように潰される」(ルカシェンコ)

ムソルグスキーの歌劇『ボリス・ゴドノフ』に「蚤の歌」がある。アウエルバッハの酒場でメフィストフェレスが歌う有名な歌だ。不世出の名バス歌手のフョードル・シャリアピン(1873-1938)が得意にしていた。 ロシアの皇帝(プーチン)は一匹の蚤(ブリゴジン)を飼っていた。 皇帝は蚤が大好きで可愛がっていた。服屋を呼んで服を作らせた。ビロードの燕尾服だ。 皇帝は蚤を大臣に任命した。王妃(ゲラシモフ)も女…

アパート住まいの聖人、小室直樹と鈴木邦男

アパートを一生の住家として、家を持たず金を持たず女房を持たず、只ひたすら読書に明け暮れて真理を追い求めた人がいた。そういう新右翼の鈴木邦男(1945-2023)が今年死んだ。その先例に小室直樹(1932-2010)がいた。一生を安アパートで暮らした人だった。 と、くれば美談なのだが、どうもそうはいかなかったようだ。小金が貯まって、もっと快適な一戸建て住宅に引っ越して、余生を送ったというのが事実だ…

高橋直史指揮大阪交響楽団のサンサーンス3番

全編出色の演奏であった。ダイナミクスも楽譜に囚われず歌わせる方を優先させてた演奏が良かったのであろう。 第二楽章。 Tの前、オルガンを受けてテインパニがffを打つところ、fffで力んだのには驚かされた。 fffの外連味は功を奏したといえるだろう。この機会にコーダに向かう演奏が高揚した。 一番驚かされたのは、コーダでテインパニの後半に長いリタルランドを掛けたことだ。 テインパニの最後の4分音符3つ…

1947年フルトヴェングラー復帰演奏会謎の空白日5月26日を推理する

1947年フルトヴェングラーの戦犯容疑が晴れて、ベルリン・フィルに復帰した演奏会が開催された。5月25日と5月27日の二日間であった。そして5月26日が空白日になっている。それは無意味な空白なのか。5月26日は、バージョンA(25日)からバージョンB(27日)に変更された練習日だったのではないか、という推理です。 1947年5月23日(金) O後にフルトヴェングラーの伝記を書くカルラ・ヘッカーは…

ノリントン指揮シュツットガルト放送響のベートーベン6番

ノリントンは古楽派では唯一のアゴギーク(伸縮)を使用する指揮者だ。そういう意味ではベートーベンの交響曲6番は古楽奏法とアゴギークが絶妙な統合を見せた傑作であった。 第一楽章。 古楽奏法とアゴギークが統合された名演であった。それは冒頭ですぐ見せた。速いテンポで開始されたが、ノリントンは伝統的な演奏のテンポの落ち込みを厭わない。 ノリントンが選択したのはフルトベングラーがローマ放送管弦楽団に客演した…

バレンボイム・ゼジニゼ・木村太郎

2023・6・16(金)は、色々な事がありました。 評論家木村太郎はフジテレビで7月ウクライナ和平締結を予言しました。果たして当たりますか。それにしてもテレビでは最初の発言で、これが貴重です。裏世界では目に見えない動向がある。多分岸田首相の解散不発弾発言は、選挙どころではない激動を反映している。やはり中国が主役で、プーチンに習近平が引導を渡すということなのでしょう。 ロシアは民主主義国家に生まれ…

一番新しい演奏法ボストック指揮南西ドイツプフォルツハイム室内管弦楽団のモーツアルト31番

ダグラス・ボストック(1955-)は、何と東京佼成ウインドオーケストラ、東京芸大、洗足学園大学と、日本でお馴染みの指揮者であった。この指揮者が今一番新しい演奏法でモーツアルト演奏をけん引している。 モーツアルトの交響曲31番『パリ』は、ボストックの生涯の代表作になる名演奏だ。20名近い有名指揮者が31番を指揮しているが、随一の抜きん出た名演である。彼が首席指揮者をしているプフォルツハイム室内管弦…

太宰治『千代女』と女流作家豊田正子の予言

太宰治にこれほどポレミック(論争的)な小説はない。素材は「綴方教室」で一世を風靡した豊田正子がモデルということは確定している。投稿雑誌『青い鳥』は鈴木三重吉の『赤い鳥』がモデルも確定している。なにを今更作文の豊田正子をモデル小説に書いたのか、疑われる。本音は第一回芥川賞の選考会だ。文壇を疑似文壇たる児童文学界にことよせて、小説家太宰治を認めない既成文壇の不条理さを、描くことにあった。豊田正子は何…