続パスカルの葦笛のブログ

FMラジオやテレビやCDのクラシック音楽の放送批評に特化したブログです。

一番新しい演奏法ボストック指揮南西ドイツプフォルツハイム室内管弦楽団のモーツアルト31番

ダグラス・ボストック(1955-)は、何と東京佼成ウインドオーケストラ、東京芸大、洗足学園大学と、日本でお馴染みの指揮者であった。この指揮者が今一番新しい演奏法でモーツアルト演奏をけん引している。 モーツアルトの交響曲31番『パリ』は、ボストックの生涯の代表作になる名演奏だ。20名近い有名指揮者が31番を指揮しているが、随一の抜きん出た名演である。彼が首席指揮者をしているプフォルツハイム室内管弦…

太宰治『千代女』と女流作家豊田正子の予言

太宰治にこれほどポレミック(論争的)な小説はない。素材は「綴方教室」で一世を風靡した豊田正子がモデルということは確定している。投稿雑誌『青い鳥』は鈴木三重吉の『赤い鳥』がモデルも確定している。なにを今更作文の豊田正子をモデル小説に書いたのか、疑われる。本音は第一回芥川賞の選考会だ。文壇を疑似文壇たる児童文学界にことよせて、小説家太宰治を認めない既成文壇の不条理さを、描くことにあった。豊田正子は何…

緊急報告!洒落たことやってくれましたリン・ダーイエのブルックナー

第四楽章、76小節でリン・ダーイエが何とシンバルを演奏しましたよ。洒落たことしてくれましたね。 まあ一般的には現在ほとんどしませんよね。フルトベングラーやクナッパーツブッシュを知らないわけではない。ブロムシュテット指揮ウィーン・フィルは改訂版はしたくないので、テインパニでその効果を出した。 リン・ダーイエ指揮杭州フィル(2022・6・26)ブルッナー交響曲4番。

清瀬保二(1900-1981)と木山捷平(1900-1968)

作曲家清瀬保二の代表作歌曲集『メクラとチンバ』がウィキペディアから追放処分されているのは残念でならない。不穏当な表現が災いした処分である。丸で評価に値しない作品に等しい処分である。こんなことが許されていいのかなあ。 というわけで無きに等しいわけだ。それなら人はどの術を使ってこの傑作に行き付くのか。この点で文学はまだ表現の自由があり、作者の木山捷平の項目を引くと、『メクラとチンバ』に出会える。 そ…

コーダで超絶技巧のエッシェンバッハ指揮KBS交響楽団のブラームス4番

エッシェンバッハは第四楽章のコーダで、超絶技巧のリタルランドを披露した。今年最大の名演と言っていいだろう。 第二楽章。 83小節の2つの8分音符にポコ・リテヌートを掛けて、ようやく本腰の演奏になった。これはシューリヒト指揮バイエルン放送交響楽団、バレンボイム指揮ベルリン・シュターツカペルレの演奏でもある。 第三楽章。 34小節のテインパニにクレッシェンドを掛けた。88小節も同様だ。223小節も同…

追悼:加賀乙彦『フランドルの冬』とアンリー・エー

芹沢光治良は『巴里に死す』が仏訳され、ノーベル賞候補になったとといわれている。加賀乙彦の『フランドルの冬』が仏訳されたら、同様のことがあったのではないか。むしろ内容はフランス人には身近であり関心の的もあり、ノーベル賞受賞に届いた気がする。スキャンダラスな内容はフランス人向きで、フランス人の趣味にも合致している。有名な精神科医の隠されたセックス・スキャンダルはそれだけで面白い。 フランスの精神医学…

ルイージ指揮NHK交響楽団のベートーベン6番『田園』

大変フルトベングラーを意識した演奏だった。その影響は多々あったのが好ましかった。 第二楽章。 フルトベングラー指揮ベルリン・フィル1954年では小鳥たちのさえずりでは、132小節のフルートの後半でアッチェレラントを掛けたが、ルイージが踏襲している。 正確に言えば、3つ目から急速に速度を上げた。 第三楽章。 131-132小節のクラリネットの下降旋律はさらにテンポが速いのが、フルトヴェングラーとル…

芥川龍之介の『玄鶴山房』と黒歴史

『韓非子』に玄鶴の故事がある。春秋時代に衛の霊公が旅先の宿で琴の音を聞いて眼が醒めた。たえなる音楽に感動して、楽人を呼んで採譜させたのである。普の平公に会った時、この話をして演奏させた。平公はこれは亡国の歌で最後まで演奏してはならないといった。周の武王が殷の寸王を討伐した時追われて入水自殺をした時にこの音楽を聞いた故事が残っている。琴を一回演奏すると黒色の鶴が十六羽王門に集まった。不吉の兆しだっ…

斉藤有香里指揮関西フィルのシューマン4番

斉藤はドイツの正統派の指揮伝統を学んでいて、それを日本に移植するという点で優れているわけで、今回もそれを痛感させられた。 第一楽章。 42小節のテインパニで、斎藤はリタルランドを掛けた。 ケーゲル指揮NHK交響楽団の演奏はその3つの8分音符にffを掛けたということでユニークだった。もっともケーゲルは16分音符からリタルランドがかけられているから、その頂点がちょうどffが掛かった所から開始されるの…

山崎行太郎の柄谷行人論(『力と交換様式』)

哲学のノーベル賞バーグルエン賞を受賞した柄谷行人の『力と交換様式』だが、今一番簡単に解説しているのが山崎行太郎である。『合評会・柄谷行人力と交換様式』(23・2・18)があり、『柄谷行人を解く』(23・5・11)もいいだろう。分かり易く解説しているのは山崎行太郎以外にいない。 山崎は『小林秀雄とベルグソン』でデビューした時江藤淳と柄谷行人から評価され、それ以来柄谷フアンを自認してきた。柄谷も小林…

ブリュッヘン指揮18世紀オーケストラのモーツアルト41番

ブリュッヘンの1986年のライブ録音。古楽器奏法の最初期の録音である。 第一楽章。 94小節の楽譜はfで印刷sされているが、ブリュッヘンは何とあえてppに演奏している。  これはかなり衝撃的な演奏だったらしく、ルネ・ヤコブ指揮フライブルグバロック・オーケストラもppにしている。ブリュッヘンの影響であろう。 234小節のバイオリンをfの文脈で、ppに弱めてえんそうしているのも印象的であった。 第二…

ミョンフン指揮東京フィルのブルックナー7番

この人の強みはダイナミクス・レンジの広さで、誰よりも大きな音がする。それがブルックナーにも生かされたということか。 第一楽章。 91小節のホルンで、第一拍目の付点二分音符が見事なクレッシェンドをした。 シューリヒト指揮ハーグ・フィルの演奏で、古来より名演の誉がある。91-103小節の シューリヒトの演奏を範にしていることが分かる。 第四楽章。 コーダの312-314小節の大リタルルダンドは、クナ…

N響生中継ルイージ指揮NHK交響楽団のフランク交響曲

ルイージによると近年のヨーロッパでは次第にフランクの交響曲は演奏されなくなっているという。元来が地味な音楽である上に名演が少なくなったためであろう。フルトベングラーやパレーの演奏などが名盤なのであろう。ヤニック・ネゼ=セガンが指揮したモントリオール・メトロポリタン歌劇場管弦楽団の演奏などは直近の名演である。 さてルイージ指揮N響の演奏だが、フルトベングラーの名演を欲しいままにした第一楽章のコーダ…

アルノンクール指揮ウィーン・コンツェルト・ムジクスのベートーベン5番『運命』

アルノンクールの『運命』の演奏、古楽器奏法の演奏としては貧相過ぎたが、第四楽章では面目が躍進された。ちょっと全集の完成がとん挫した所以が分からないではない。是が非でも完成させたい執念があったら、完成出来たのであろうが、そういう緊張感がないのである。 とはいえ第四楽章は傑作である。58小節のトロンボ-ンは楽譜はfだがアルノンクールはfffに強調して演奏させているのだ。 なるほど効果は尋常ではない。…

東京銀座強盗事件、日本はウクライナになる

東京銀座の高級ブランド腕時計店強盗事件で、通り掛けの女性がドアを閉めて犯罪行為に抵抗する姿が話題になっている。何人かが眼前で犯罪行為がおこなわれていることに、こんなことが許されてはいけないと自然発生的な良心の抗議を表現している。 この国が無法地帯になる境界線に立っている気がしてならない。これを見逃したら確実にそうなる。まさにあの姿が今のニューヨークの姿だ。目の前で犯罪行為が行われても、ニューヨー…

フランク指揮フランス放送フィルのドビッシー交響詩『海』

フランクの巨漢の体格に相応しく強引に引っ張られてゆくドビッシーの『海』は改訂版の楽譜の弱点にもかからわず、強引な音作りが功を奏した。 フランクはあまりテンポを揺らさないのだが、それでも最小限のアゴギーク(伸縮)があった。第三楽章の49-10小節で例によって幾分テンポを落とした。52-7小節ではデイミヌエンドを反対にアクセントで強調した。 55の1小節前でやはりテンポを落としたのが印象的だ。 さす…

画期的な演奏バーメルト指揮札幌交響楽団のシューベルト8番

バーメルトに間違いがあるとしたら、この画期的な演奏を消極的に表現したことだろう。本邦初の新全集版の楽譜で8番(9番)を演奏したことは画期的なことだ。 ノーマルなオーケストラではアバドが紹介した新全集版の楽譜で演奏されることは日本でも欧米でも稀である。アバド指揮ヨーロッパ室内管弦楽団による新全集版の8番の演奏は衝撃的な内容のわりには影響力がなかった。誰も踏襲しなかったというのが正直な印象だ。 第一…

「魂を継ぐもの~破滅の無頼派・西村賢太」Eテレ特集

4月29日(土)Eテレで、『魂を継ぐもの~破滅の無頼派・西村賢太』が放送された。例によって件の人物が顔を揃えて七尾の菩提寺に一周忌をおこなった。玉袋筋太郎の元気な姿が見えて慶賀に耐えない。(長く細く人生を全うしていただきたいと願う。)伝説的な人物の朝日書林の荒川義雄氏が登場して拝顔できたのがなによりであった。 まあそれぞれの西村賢太像があって、存分に楽しむ以外にないわけである。人生の素材を出し惜…

スクロヴァチェフスキ指揮ガリシア交響楽団のブルックナー4番

この人の伝統回帰にも凄いものがある。アメリカ時代は機能一点張りの機能主義者で、楽譜に書いてあることを如何に音にさいげんするかに腐心した指揮者だった。そしたら古臭いブルックナーを取り上げ、しかも伝統的な解釈に復帰した。彼の本音はここにあったわけだ。伝統的な解釈を知らないないのではなく、ただ封印していただけだったのだ。 多分伝統的な解釈では、大陸で個性を発揮できる自信がなかったのであろう。時代もそう…

テレビの総合力平均力が、岸田首相爆弾事件の犯人で再評価

和歌山の岸田首相爆弾事件の犯人で、消える運命のテレビが再評価されてきた。犯人は安倍国葬に皆が反対しているのに何故実行したかで不満だった。 犯人が日本国民の皆が反対しているのに国葬をやったことに反発した。自分の心地よい意見ばかりに耳を傾けて反対意見が頭に入らない。SNSばかりやっている人は自分と同じ意見ばかり気にしていて、反対意見がわからない。 安倍国葬に一般国民が参列して、自腹で献花を買って参加…